教育資金と結婚・子育て資金の一括贈与が制度見直し

堀 雅哉
2021.02.08

 令和3年度税制改正大綱によると、今年3月までの期間限定措置となっていた「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税(以降、教育資金の一括贈与の非課税制度)」および「直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税(以降、結婚・子育て資金の一括贈与の非課税制度)」について、一部内容の見直しをしたうえで、2年間延長(令和5年3月まで)することとされている。
教育資金、結婚・子育て資金一括贈与の非課税制度の概要
 教育資金の一括贈与の非課税制度とは、直系尊属から一括贈与された教育資金について、所定の要件を満たすことで1,500万円(学校等以外の者に支払われる金銭については500万円)まで非課税とする特例、また、結婚・子育て資金の一括贈与の非課税制度とは、直系尊属から一括贈与された結婚・子育て資金について、所定の要件を満たすことで1,000万円(結婚に際して支払う金銭については300万円)まで非課税とする特例であるが、このたびの税制改正において、適用期間の延長にともない、取扱いの見直しが行われる予定である。
教育資金、贈与者死亡時の管理残額の取扱いが改正に
 贈与者が死亡した時点の管理残額(非課税拠出額から教育資金や結婚・子育て資金を支出した残額)の取扱いについて、教育資金の一括贈与の非課税制度においては、現行制度では贈与者死亡3年前以内の贈与に関する残額についてのみ相続税課税の対象としており、それより前の贈与に関する残額については課税がされない取扱いとなっていたが、このたびの税制改正により、贈与者が死亡した時点での管理残額については全額を相続税課税の対象とする取扱いに改正されることとなった。ただし、受贈者について、①年齢が23歳未満、②学校等に在学中、③教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受講中、これらに該当する場合は従来どおり、相続税課税対象外として取り扱われる。

 教育資金一括贈与については、贈与者死亡3年超以前の贈与分に関する管理残額が相続税の課税対象外となることを利用して、生前に相続財産を圧縮して相続税の節税目的に使っているケースが問題視されており、このたびの改正が成立すると、そのような活用の防止につながることとなる。なお、結婚・子育て資金の一括贈与の非課税制度については、制度の創設から、贈与者死亡時の管理残額は相続税課税の対象とされており、今回の改正により、教育資金、結婚・子育て資金の管理残額が同じ取扱いとなる。
孫に相続税が課税される場合の2割加算を適用
 また、受贈者が贈与者の子以外の直系卑属(贈与者の孫等)の場合、現行では相続税の課税(贈与者死亡時の管理残額への課税)において、2割加算は適用対象外とされてきたが、今回の改正により、2割加算が適用されることとなる。こちらは、教育資金、結婚・子育て資金ともに改正される項目であり、こちらも節税目的(2割加算の回避)の余地をなくすことが目的のようである。
結婚・子育て資金は、受贈者の年齢が18歳以上に
 教育資金の一括贈与の非課税制度については、その範囲について若干の見直しがされ、結婚・子育て資金の一括贈与の非課税制度については、民法改正による成年年齢引下げにともない、令和4年4月1以降において、受贈者の年齢要件の下限が18歳以上に改正される。

 なお、上記の改正については特に断りのないものについては、令和3年4月1日以降の贈与に適用される。また、上記の内容は、令和3年度税制改正大綱の内容によるものであり、税制改正法案の成立によって正式に決定することとなる。
令和3年度税制改正大綱については、国会を通過するまでは確定事項ではありません。
参照:
(セールス手帖社 堀 雅哉)

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