奨学金の返済に困った時は減額返還・返還期限猶予を

森田 和子
2021.02.22

 大学生や専門学校生など多くの学生が利用しているのが日本学生支援機構の奨学金です。貸与型の奨学金を利用した人は卒業後に返還していきますが、収入減などで家計が厳しくなると返還も難しくなります。毎月の返還金額を減らすことや、期限を延ばすことのできる制度があるので、延滞してしまう前に手続きすることをお勧めします。新型コロナウイルス感染症の影響を受けて収入が減少した場合も対象です。内容を確認していきましょう。
毎月の返還額を減らす減額返還
 日本学生支援機構の奨学金には、返還が難しい時のために、減額返還と返還期限猶予の制度があります。対象になるのは、災害、傷病、経済困難、失業などの返還困難な事情が生じた場合です。経済困難と認められるのは、給与収入の場合、減額返還では年間収入325万円以下、返還期限猶予では年間収入300万円以下です(※)。
被扶養者がいる場合、親への援助がある場合などは、一定額を控除して収入基準以下になる場合には願出が可能です。
 減額返還は、月々の返還金額を減らせば返還できる人が、金額を1/2または1/3に減らすことにより返還しやすくする制度です。1回の申請で最長12ヵ月分の減額返還を願い出ることができ、毎年手続きをすることで最長15年まで延長することができます。

 例えば、毎月16,000円の返還額を1/2にすると8,000円になります。もしも2年間減額返還を利用すると、返還完了までの期間は1年延びるので、当初の返還完了が42歳であれば、43歳になります。

 なお、所得に応じて返還額が変わる所得連動返還方式を選んでいた人は減額返還を利用することができません。
返還期限を延ばす返還期限猶予
 返還期限猶予は、返還が困難な人が一定期間返還を待ってほしい場合に願い出る制度です。こちらも1回の申請で最長12ヵ月分の延長を願い出ることができ、毎年手続きをすることで最長10年延長することができます。もしも2年間返還期限猶予を利用すると、返還完了までの期間は2年延びるため、当初の返還完了が42歳であれば、44歳になります。

 すでに経済困難、失業中等の理由で返還期限猶予制度を10年取得済みの人についても、今回の新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて経済困難等の事情により返還が困難となった場合に限り、緊急的に12ヵ月を限度として願い出ることができます。なお、災害、傷病、生活保護受給中、産前休業・産後休業および育児休業、一部の大学校在学、海外派遣の場合は10年の制限がありません。

 減額返還と返還期限猶予のどちらも審査があり、承認を受ける必要があります。承認されない場合には通常の返還を続けなければなりません。また、毎年手続きが必要ですが、途中で通常の返還に戻すこともできます。

 どちらの制度を利用しても、元金や利子が減るものではなく、返済総額は変わりません。負担を先送りにする制度であるとも言えるので、家計が回復したら通常の返還に戻していくべきでしょう。可能であれば、少しずつでも返還が進む減額返還の方が、将来の負担を減らせます。

 なお、日本学生支援機構の奨学金については、今回ご紹介した減額返還や返還期限猶予の他にも、死亡や精神・身体の障害による返還免除の制度もあります。困難な状況にあるときには無理をしないで相談してみましょう。
参考:
森田 和子(もりた・かずこ)
FPオフィス・モリタ 代表
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®認定者、DCA(確定拠出年金アドバイザー)

大学卒業後、コンピュータソフト会社、生命保険会社勤務を経て、1999年独立。保険や投資信託の販売をしない独立系のファイナンシャル・プランナー事務所としてコンサルティングを行っている。
お金の管理は「楽に、楽しく」、相談される方を「追い詰めない」のがモットー。情報サイト・新聞・雑誌への執筆多数。企業・学校・イベントで行うマネープランセミナー・講演も好評。

FPオフィス・モリタ http://okane-net.com/

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