公的年金等の受給者に対する確定申告不要制度

浅野 宗玄
2021.02.22

公的年金等の収入金額が400万円以下等の場合は確定申告不要
 国税庁では、公的年金等の受給者に対する確定申告不要制度の周知を図っている。それは、公的年金等の収入金額が400万円以下(複数の公的年金等を受給している場合は、その収入金額の合計額で判定)であり、かつ、その公的年金等の全部が源泉徴収の対象となる場合において、公的年金等に係る雑所得以外の所得の合計金額が20万円以下である場合には、所得税の確定申告書を提出する必要はないというもの。

 ただし、外国の制度に基づき国外で支払われる年金など源泉徴収の対象とならない公的年金等の受給者は、確定申告不要制度の適用はない。

 また、医療費控除や雑損控除などによる所得税の還付を受ける場合や、上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除など、確定申告書の提出が控除適用の要件となっている控除を受ける場合には、確定申告をする必要があるほか、所得税の確定申告が必要ない場合であっても、住民税の申告が必要な場合がある。
住民税の申告が必要な場合と所得金額の計算方法
 住民税の申告が必要な場合とは、(1)公的年金等に係る雑所得のみがある人で、「公的年金等の源泉徴収票」に記載されている控除(社会保険料控除や配偶者控除、扶養控除、基礎控除等)以外の各種控除の適用を受けるとき、(2)公的年金等に係る雑所得以外の所得があるときである。「公的年金等に係る雑所得以外の所得」で主なものの所得金額の計算方法は、次のとおりとなる。

 給与所得(給与・賞与、パート収入など)は、「給与等の収入金額-給与所得控除-所得金額調整控除額」。所得金額調整控除とは、給与所得控除後の給与等の金額及び公的年金等に係る所得金額の合計額が10万円を超えるものの総所得金額を計算する場合には、給与所得控除後の給与等の金額(10万円を限度)及び公的年金等に係る雑所得の金額(10万円を限度)の合計額から10万円を控除した残額を、給与所得の金額から控除するもの。

 事業所得、不動産所得、公的年金等以外の個人年金、原稿料などの雑所得は、「総収入金額-必要経費」。配当所得(上場株式等に係る配当所得の申告不要制度を選択した場合は除く)は、「収入金額-株式などの元本取得に要した負債の利子」。一時所得(生命保険の満期返戻金など)は、「{総収入金額-収入を得るために直接要した金額-特別控除額(最高50万円)}×1/2」、がそれぞれの所得の計算方法となる。
参考:
浅野 宗玄(あさの・むねはる)
株式会社タックス・コム代表取締役
税金ジャーナリスト

1948年生まれ。税務・経営関連専門誌の編集を経て、2000年に株式会社タックス・コムを設立。同社代表、ジャーナリストとしても週刊誌等に執筆。著書に『住基ネットとプライバシー問題』(中央経済社)など。
http://www.taxcom.co.jp/
○タックス・コム企画・編集の新刊書籍『生命保険法人契約を考える』
http://www.taxcom.co.jp/seimeihoujin/index.php

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