希望者全員が66歳以上まで働ける企業は12.7%

庄司 英尚
2021.03.01

65歳を定年とする企業18.4%
 厚生労働省は、毎年6月1日現在の高年齢者の雇用状況の報告を各企業に対して求めており、それらを取りまとめた「令和2年『高年齢者の雇用状況』集計結果」(6月1日現在)をこのほど公表した。「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(高年齢者雇用安定法)」の改正により、2021年4月から70歳までの就業確保(努力義務)が施行されることから、同集計結果(データ)は参考にしたいところである。

 それによると、報告した全ての企業に占める割合で見ると、65歳を定年とする企業は18.4%(対前年1.2ポイント増)となった。企業規模別では、中小企業では19.2%、大企業では11.9%となっている。定年を65歳に引き上げる企業が少しずつ増加しているものの、まだまだ継続雇用制度の導入によって雇用確保措置を講じている企業が大半というのが実状のようだ。
70歳までの就業確保、努力義務に
 今後、この改正を受けて対応を準備している企業もあると思われるが、データによると66歳以上働ける制度のある企業は33.4%(同2.6ポイント増)、70歳以上働ける制度のある企業は31.5%(同2.6ポイント増)となっている。

 定年制を廃止している企業は2.7%(前年と比べ変動なし)、定年を66~69歳とする企業は1.0%(同0.1ポイント増)、定年を70歳以上とする企業は1.5%(同0.2ポイント増)というようにまだまだその割合は少ない。

 しかし、定年制の廃止・延長に加え、継続雇用制度も含めると、希望者全員が66歳以上働ける制度のある企業は12.7%(同1.0ポイント増)となっており、働きたい方すべてが70歳まで働くことができる環境が整っているとはいえないが、徐々に高齢者雇用に理解を示している企業が増えてきていることは確かである。
シニア労働者との労働トラブルは少なくない
 定年後のシニア労働者の再雇用または嘱託契約については、働く側の希望にあわせて企業側が柔軟に対応できるように労働条件を提示していくことができれば理想的だ。

 働く側の目的は「収入確保のため」という方が意外にも多く、雇用契約書をしっかり締結して時間をかけて説明することが重要である。採用前に話していたことと違うということでトラブルになることも多く、特に労働時間、賃金などの大事な労働条件についてはちょっとしたトラブルが一緒に働く同僚にも悪影響を与えてしまうので注意が必要だ。

 また、定年後の再雇用については、同一労働同一賃金の問題も意識しなければならない。中小企業においては、定年後の再雇用でも定年前とほとんど同じような仕事をしてもらうケースも多いので、その際に正社員との待遇差の内容や理由を求められたときにはきちんと説明できなければならない。

 最後に、シニア労働者にはテレワークを有効活用して、通勤の負担を軽くして生産性を上げるというのも一つの方法である。また、オンラインミーティングなども積極的に活用して、後輩の人材育成にも協力してもらうことができるよう段取りをしておきたい。
参照:
庄司 英尚(しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、アイウェーブ社労士事務所 代表
社会保険労務士 人事コンサルタント

福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所(現・アイウェーブ社労士事務所)を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続き及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。

公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/

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