医療費控除、病気予防や健康維持などの費用は対象外

浅野 宗玄
2021.03.01

令和元年分の確定申告では756万人が適用
 令和2年分の所得税等の確定申告が始まっている。多くの人にとっては関係ないと思われようが、確定申告をすれば税金が戻ってくる還付申告がある。中でもポピュラーなものに医療費控除があり、令和元年分の確定申告では756万人が適用を受けた。会社員の場合は、医療費控除によって、給与から天引きされた所得税の還付が受けられ、個人事業主の場合は、医療費控除を確定申告に反映させることで節税効果につながる。
 医療費控除は、その年の1月1日から12月31日までの間に自己又は自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために支払った医療費が10万円(総所得金額が200万円未満の人は、その5%)を超えるときは、その医療費の額を基に計算される金額の所得控除(最高で200万円)を受けることができる。算式は、「実際に支払った医療費の合計額-保険金などで補てんされる金額-10万円(又は総所得金額の5%)」となる。
治療目的での医療行為に支払った費用が対象
 対象となる医療費は、治療を目的とした医療行為に支払った費用で、例えば、(1)病院での診療費、治療費、入院費、(2)医師の処方箋をもとに購入した医薬品の費用、(3)治療に必要な松葉杖など、医療器具の購入費用、(4)通院に必要な交通費、(5)歯の治療費(一般的に支出される水準を著しく超えない保険適用外の費用を含む)、(6)子供の歯列矯正費用、(7)治療のためのリハビリ、マッサージ費用、(8)介護保険の対象となる介護費用、などが挙げられる。
病気の予防や健康維持などが目的の医療費は対象外
 一方で、病気の予防や健康維持などを目的とした医療費は、医療費控除の対象外となる。具体的には、(1)人間ドックなど健康診断の費用(病気が発見され治療をした場合は対象になる)、(2)予防注射の費用、(3)美容整形の手術費用、(4)治療に必要のない漢方薬やビタミン剤の費用、(5)マイカー通院のガソリン代や駐車料金、(6)里帰り出産のための実家への交通費、(7)自分の都合で利用した差額ベッド代、などは医療費控除の対象とはならない。
令和2年分から「医療費控除の明細書」の添付が必要
 なお、令和2年分からは、医療費控除を受ける場合に、「医療費控除の明細書」を申告書に添付する必要がある。医療保険者から交付を受けた医療費通知がある場合は、医療費通知の添付によって医療費控除の明細書の記載を簡略化することができる。
 また、医療費控除の明細書の記載内容を確認するため、確定申告期限等から5年を経過する日までの間、医療費の領収書(医療費通知を添付したものを除く)の提示又は提出を求められる場合がある。

 なお、還付申告の場合は、確定申告は過去5年間にさかのぼって申告をすることができるので、控除漏れがあった場合は忘れずに申告するのがよいだろう。
浅野 宗玄(あさの・むねはる)
株式会社タックス・コム代表取締役
税金ジャーナリスト

1948年生まれ。税務・経営関連専門誌の編集を経て、2000年に株式会社タックス・コムを設立。同社代表、ジャーナリストとしても週刊誌等に執筆。著書に『住基ネットとプライバシー問題』(中央経済社)など。
http://www.taxcom.co.jp/
○タックス・コム企画・編集の新刊書籍『生命保険法人契約を考える』
http://www.taxcom.co.jp/seimeihoujin/index.php

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