給与支払いにもキャッシュレスの波が!?

高橋 浩史
2021.03.08

 デジタル庁の設置など、日本のデジタル化の遅れを挽回する動きは盛んですが、ここへ来て、「給与のデジタル払い」解禁の議論も進んでいます。一部メディアによると、2021年春には解禁されるのではとの報道がありました。
いよいよ給与もデジタル化に?
 労働基準法では、労働者への給与の支払いは、労働者保護の観点から全額を通貨で支払うこととされていますが、企業と労働者が同意すれば、銀行などへの振り込みも、例外として認められています。

 今後、給与のデジタル払いが認められれば、スマホ決済などの資金移動業者の口座に、給与の支払いが可能となります。労働者にとっては、銀行ATMからその都度お金を引き出す手間が省けるメリットが考えられ、企業側にとっても、給与の振込み手数料の軽減や業務の効率アップに繋がる可能性もあるでしょう。

 これまでも、一部のフィンテック企業がフリーランスや個人事業主などへの報酬に、デジタルマネーを支払うサービスを展開していましたが、会社員への支払いに対しては、デジタル報酬サービスの利用は認められていませんでした。
デジタル払いのメリットやデメリットは?
 給与のデジタル払いを後押しする背景として、社会のデジタル化促進はもちろんですが、働き方の多様化や、コロナ禍による副業人材の増加も挙げられるでしょう。

 報酬の支払い方法が増えれば、日雇いアルバイトや非正規労働者にとっては、月単位の支払いではなく即日払いなど、フレキシブルな報酬受取りが可能になるかもしれません。会社員の場合は、給与を銀行振込みとスマホ決済へ振り分けるといった受け取り方も想定されます。

 一方で、資金移動業者の経営破綻や、安全性などセキュリティ上の課題、デジタル給与を現金にするときの手続きや、手数料はどうなるのかといった問題も。解禁にあたっては、資金保全や個人情報の扱いなどの基準を設けて、安全性をクリアした事業者のみ認める方向になりそうです。

 給与のデジタル払いも可能になれば、キャッシュレス決済が進展する可能性は高まるでしょう。また、家計についても、固定費の支払いや現金が必要なときの手間など、これまでとは違った家計管理の工夫が必要になるかもしれません。今後の行方に注目です。
高橋 浩史(たかはし・ひろし)
FPライフレックス 代表
日本ファイナンシャルプランナーズ協会CFP®
1級ファイナンシャル・プランニング技能士

東京都出身。デザイン会社などでグラフィックデザイナーとして20年活動。 その後、出版社で編集者として在職中にファイナンシャル・プランナー資格を取得。2011年独立系FP事務所FPライフレックス開業。 住宅や保険など一生涯で高額な買い物時に、お金で失敗しないための資金計画や保障選びのコンサルタントとして活動中。 その他、金融機関や出版社でのセミナー講師、書籍や雑誌での執筆業務も行う。
ホームページ http://www.fpliflex.com
ブログ http://ameblo.jp/kuntafp/

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