テレワークするには自宅環境に不満あり

庄司 英尚
2021.04.05

仕事とプライベートの境界線が曖昧になりやすい
 日鉄興和不動産(株)の研究所「+ONE LIFE LAB」と(株)オカムラの「WORK MILL」プロジェクトでは共同調査を実施。2020年1月10日と2021年3月9日に発表した調査結果の中にテレワークに関して興味深いデータがあったのでここに紹介する。

 「在宅ワークをしていて困っていること、不満に思っていること」(複数回答可)の設問に対する上位5回答は、「オンとオフの切り替えが出来ない」(38.7%)、「集中しすぎて、座る時間が長くなる」(21.6%)、「困ったときに誰かに聞けない」(20.5%)、「快適に働くための家具が不十分」(17.1%)、「仕事に使用した物の片付けが面倒」(14.8%)であった。

 「在宅ワークにおいて、課題点はどんなことですか」の設問に対する上位5回答は、「運動不足になる」(58.1%)、「光熱費が上がる」(48.0%)、「仕事のオンとオフが切り替えづらい」(47.4%)、「仕事に集中しにくい」(35.2%)、「コミュニケーションに時間がかかる」(34.5%)であった。

 テレワークの場合、時間管理が難しく、仕事と私生活の切り替えがうまくいかないことが多い。気づいたら所定労働時間を超えてずっと仕事をしてしまっているということもよくあり、労働時間管理だけでなく、リフレッシュを促すような通知、業務終了時間などを超えて仕事しているときにはそれに気づけるような設定をしておくことが望ましい。

 単身者の場合、テレワークが続くと話し相手もいないのでストレスがたまってしまう。テレワークによる長時間労働がメンタル不調の原因になることも多いので、そのあたりは上司だけでなく企業の経営課題の1つとして対応策を考えていくべきである。
半数が仕事部屋ではないスペースを利用
 「在宅勤務の場合、どのような場所で最もよく仕事をしますか?」の設問に対する回答は、「仕事用ではないスペース(ダイニングテーブルなど)」が51.4%と半数を占め、以下、「仕事専用の独立した部屋(書斎)」(25.0%)、「仕事専用コーナー(PCテーブル)」(13.9%)、「その他」(9.7%)の順であった。コロナ禍によりテレワークになった人は、自宅にあったテーブルや椅子を使い続けていることが多く、腰痛や肩こりなど体調面の不満から企業側に仕事環境の充実のための支援を要望するケースが増えてきているようだ。

 「柔軟な働き方のメリットとデメリット(上位5位)」の設問のデメリットの回答を見てみると、「プリンタなどの出力ができない」(205)、「書類や資料が手元にない」(164)、「仕事上のコミュニケーションが不足」(130)、「時間管理が難しい」(120)、「デメリットは感じない」(106)であった。

 新型コロナウイルス感染症の終息が見通せないことから、今後さらにテレワークが進んでいくことが予想される。在宅勤務による従業員の不満を解消することができれば生産性のアップも期待できるであろう。このような調査結果を参考にして自社の在宅勤務制度を見直してほしい。
参照:
庄司 英尚(しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、アイウェーブ社労士事務所 代表
社会保険労務士 人事コンサルタント

福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所(現・アイウェーブ社労士事務所)を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続き及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。

公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/

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