勤めと介護を両立している人に知ってもらいたい介護休業給付金

庄司 英尚
2021.04.19

雇用保険を財源とする公的給付
 介護休業とは、要介護状態(負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態)にある家族を労働者が介護するために取得できる休業である。介護休業制度は育児・介護休業法によって詳細が定められている。

 その介護休業を取得している間の経済的支援として、雇用保険の被保険者で一定の要件を満たしている際に支給されるものが介護休業給付金である。介護休業給付金は、雇用保険法に規定されているものであり、事業主をはじめとして全労働者が基本的概要は理解しておきたいところであるのでここにポイントを紹介する。
介護休業給付金の対象者は?
 介護休業給付金の主な給付条件は以下になっている。
雇用保険の被保険者で1年以上の雇用期間がある
家族の常時介護のため2週間以上の休業が必要である
職場復帰を前提として介護休業を取得する
介護休業期間中の1か月ごとに、休業開始前の1か月当たりの賃金の8割以上の賃金が支払われていないこと
就業している日数が支給単位期間※1ごとに10日以下※2であること
※1
介護休業開始日から起算した1か月ごとの期間。
※2
休業終了日が含まれる支給単位期間は、就業している日数が10日以下であるとともに、休業日が1日以上あること。
介護休業給付金はどのくらいもらえるのか?
 介護休業の期間は対象家族1人につき通算93日間。この93日を、3回を上限に分割して取得できるわけだが、介護休業期間に給与が通常通り支給される場合には介護休業給付金は支給されない。

 しかしながら介護休業中には、基本的に給与を支給しない企業が多いのでその補填として、1日あたり休業開始時賃金日額の67%が休業日数分(上限は93日間)支給されることになっている。給料が支給されないというのは経済的に苦しいが、さらに介護休業の場合は、育児休業と違って社会保険料が免除にはならないので注意したい。
介護休業給付金の申請先はハローワーク
 介護休業給付金の申請は、介護休業終了日の翌日から、2カ月後の月の末日までにしなければならない。この申請手続きは原則として、勤務先を経由してハローワークへ行うことになっている。

 会社がハローワークへ提出する書類は、賃金月額証明書及び介護休業給付金支給申請書となっているが、添付書類が必要になるので下記にまとめておく。
賃金台帳及び出勤簿
被保険者から事業主への介護休業申出書
介護対象家族の方の氏名、被保険者本人との続柄※3、性別、生年月日等が確認できる書類(住民票記載事項証明書等)
※3
被保険者と介護対象家族の方が同一世帯にあり、申請時に被保険者と介護対象家族の方のマイナンバーを届け出た場合は、被保険者と介護対象家族の方との続柄を確認できる書類は省略可能。
 申請や添付書類については、最新の情報を収集し、状況に応じて確認事項が増えたり変わることもあるので、その都度管轄のハローワークに相談してから申請をすることでトラブルを避けることができる。受給できると思って申請書類を提出したところそもそも対象外だったということもあり得るので、まずは概要を理解したうえで労使共に早めに準備するのが良いと思われる。
参照:
庄司 英尚(しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、アイウェーブ社労士事務所 代表
社会保険労務士 人事コンサルタント

福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所(現・アイウェーブ社労士事務所)を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続き及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。

公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/

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