インボイス制度、10月から登録申請書の受付開始

浅野 宗玄
2021.04.19

正確な適用税率や消費税額等を伝えるインボイス
 適格請求書等保存方式(インボイス制度)が2023年10月1日から導入される。
 適格請求書(インボイス)を交付できるのは適格請求書発行事業者(登録事業者)に限られる。登録事業者になろうとする事業者は「適格請求書発行事業者の登録申請書(登録申請書)」の提出が必要となる。導入当初から登録を受けるためには、原則、2023年3月31日までに登録申請書を提出する必要があるが、その登録申請書の受付が今年の10月1日から始まる。
 インボイス制度における適格請求書(インボイス)とは、売手が買手に対して、正確な適用税率や消費税額等を伝えるもので、具体的には、現行の「区分記載請求書」に「登録番号」、「適用税率」及び「消費税額等」の記載が追加された書類やデータをいう。
 インボイス制度とは、売手である登録事業者は、買手である取引相手(課税事業者)から求められたときは、インボイスを交付しなければならない(交付したインボイスの写しの保存も必要)。
免税事業者のままではインボイスを発行できず
 買手は仕入税額控除の適用を受けるためには、原則として、取引相手(売手)である登録事業者から交付を受けたインボイスの保存等が必要となる。買手は、自らが作成した仕入明細書等のうち、一定の事項(インボイスに記載が必要な事項)が記載され取引相手の確認を受けたものを保存することで、仕入税額控除の適用を受けることもできる。こうしてみると、インボイスは、現行の区分記載請求書の記載事項に情報が加わるイメージだ。
 これだけだと現行の取扱いと大きく変わらない。現行制度でも、仕入税額控除の適用を受けるためには、法定事項が記載された帳簿及び請求書等の保存が、原則として要件となっている。大きな違いは、インボイスは登録事業者のみが交付できる点。つまり、インボイスを発行するためには事前に登録を済ませておく必要がある。さらに、免税事業者は登録事業者になれない、免税事業者のままではインボイスを発行できない点は大きな注意点だ。
 買い手にとって、インボイスの保存が仕入税額控除の要件になっているから、インボイスを発行できない免税事業者との取引は、買い手からすると大きなデメリットとなってしまう。そこで、免税事業者との取引を見直す事業者もでてくる可能性もある。そのような事態を回避するため、免税事業者であっても、課税事業者選択届出書を提出し課税事業者を選択した上で登録をするという事業者もでてくるとみられている。
 なお、免税事業者からの仕入税額控除の割合については、経過措置が設けられており、以下のスケジュールとなる。2023年10月1日~2026年9月30日まで:控除割合80%、2026年10月1日~2029年9月30日まで:控除割合50%、そして2029年10月1日からは控除割合0%(控除できない)となっている。
参考:
浅野 宗玄(あさの・むねはる)
株式会社タックス・コム代表取締役
税金ジャーナリスト

1948年生まれ。税務・経営関連専門誌の編集を経て、2000年に株式会社タックス・コムを設立。同社代表、ジャーナリストとしても週刊誌等に執筆。著書に『住基ネットとプライバシー問題』(中央経済社)など。
http://www.taxcom.co.jp/
○タックス・コム企画・編集の新刊書籍『生命保険法人契約を考える』
http://www.taxcom.co.jp/seimeihoujin/index.php

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