認知症高齢者などの契約やお金の管理をサポートする日常生活自立支援事業

森田 和子
2021.04.26

 もしも将来、認知症などになったら自分一人で預金の出し入れはできるだろうかと不安に思われたことはありませんか?

 本人に代わって後見人が契約や金銭管理を行う成年後見制度がありますが、一定の判断能力がある場合には、それより前の段階で利用できる日常生活自立支援事業の制度があります。詳しく見ていきましょう。
日常生活自立支援事業とは
 日常生活自立支援事業は、認知症高齢者、知的障害者、精神障害者などのうち判断能力が不十分な人が地域において自立した生活が送れるように、利用者との契約に基づいて福祉サービスの利用援助などが行われる制度です。

 判断能力が不十分とは、情報の入手、理解、判断、意思表示を本人だけでは適切に行うことが困難な状態です。ただし、日常生活自立支援事業を利用できるのは、この事業の契約内容について判断する能力があると認められる人に限られます。

 援助の内容は、福祉サービスの利用援助や日常生活費の管理などで、具体的には以下のようなものがあります。
福祉サービス利用の申し込みや契約の代行、代理
福祉サービスに関する苦情解決制度の利用手続きの支援
病院への医療費の支払いの手続き
年金や福祉手当の受領に必要な手続き
税金や社会保険料、電気、ガス、水道などの公共料金の支払いの手続き
預貯金の出し入れ、解約の手続き
住宅改造や住居家屋の賃借に関する情報提供、相談
クーリング・オフ制度などの利用手続き
通帳・印鑑・証書などの保管  など
 他にも定期的な訪問による生活変化の察知や就労・外出支援などがあります。銀行でお金をおろすのに同行してもらう、デイサービスを利用する手続きをサポートしてもらうなどの具体的な支援も助かりますが、担当者が定期的に訪問してくれることも安心感につながることでしょう。
まず社会福祉協議会に連絡を
 制度を利用するには、社会福祉協議会に連絡をします。社会福祉協議会は、全ての都道府県・市町村に設置されており、連絡するのは本人に限られません。家族や民生委員、介護支援専門員などが連絡することもできます。

 利用が認められると、利用希望者の意向を確認した上で契約内容・支援計画が提案され、利用契約を結んだ後、支援計画に沿ってサービスが提供されます。

 相談や支援計画の作成にかかる費用は無料ですが、福祉サービス利用手続き、金銭管理などのサービスの利用には料金がかかり、訪問1回あたりの利用料は平均1,200円です。ただし、契約締結前の初期相談などの経費や、生活保護受給世帯の利用料については無料となっています。

 日常生活自立支援事業は、本人にこのサービスを利用する意思があり、契約の内容がある程度理解できることが前提になります。障害などにより本人に契約できるだけの判断能力がなくなった場合には、日常生活自立支援事業以外で適した支援に繋ぐことや、成年後見制度の利用などが支援されます。
森田 和子(もりた・かずこ)
FPオフィス・モリタ 代表
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®認定者、DCA(確定拠出年金アドバイザー)

大学卒業後、コンピュータソフト会社、生命保険会社勤務を経て、1999年独立。保険や投資信託の販売をしない独立系のファイナンシャル・プランナー事務所としてコンサルティングを行っている。
お金の管理は「楽に、楽しく」、相談される方を「追い詰めない」のがモットー。情報サイト・新聞・雑誌への執筆多数。企業・学校・イベントで行うマネープランセミナー・講演も好評。

FPオフィス・モリタ http://okane-net.com/

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