厚生労働省が履歴書の新しい様式例を発表

庄司 英尚
2021.06.07

JIS規格の様式例廃止にともない厚労省が作成
 採用においては公正な採用選考が求められ、応募者が提出する応募書類には、就職差別につながるおそれのある事項を含まないようにすることが求められている。少し前に先行して大手文具メーカーが性別記載欄を廃止した履歴書を発売してニュースで話題になったが、その履歴書について、厚生労働省が新たな様式例を作成して公表したので、今回はその背景とこれまでとの変更点についてまとめておくこととする。

 厚生労働省では、これまで公正な採用選考を確保する観点から、一般財団法人日本規格協会(JIS)によるJIS規格の履歴書の様式例の使用を推奨していた。しかし、令和2年7月にLGBT当事者を支援する団体から、厚生労働省、JIS等に対して履歴書様式の検討(性別欄の削除等)を求める要請が行われ、これを受けてJIS規格から履歴書の様式が削除されたという背景がある。そのため公正な採用選考を確保する観点から、参考となる様式を厚生労働省において定めることとして新たな履歴書様式例が作成された。

 採用選考時に使用する履歴書の様式は、この様式例を参考に公正な採用選考をしてほしいと、各事業主にお願いする運びとなった。あくまで法的拘束力はないものの履歴書の様式にこの様式例と異なる記載欄を設ける場合は、公正な採用選考の観点から特に留意が必要であることから、この様式を採用する企業が増えてくるものと思われる。
JIS規格の様式例との相違点
 厚生労働省履歴書様式例と、従来のJIS規格様式例の相違点は以下の2点だ。
1.
性別欄を「男・女」の選択ではなく任意記載欄に変更。なお、未記載とすることも可能とする。
2.
「通勤時間」「扶養家族数(配偶者を除く)」「配偶者」「配偶者の扶養義務」の4つの項目欄を削除する(4つの項目は、特に応募者のプライバシーの要素が非常に高い情報であることなどを踏まえ、項目欄として設けない)。
 企業によっては、独自のエントリーシートを求職者に提出させているところもあるが、就職差別に該当するような項目を設けていないか確認しておく必要がある。インターネット上での入力となっていてチェックを入れるだけ、アンケート形式になっていて二者択一するだけ、このようなフォームだと差別とは感じない場合もあるかもしれないが、解釈によっては差別につながる可能性が少しでもある項目はわざわざ設けることは適当ではないと思われるので、人事採用担当者もこの点は強く意識しておきたいところである。
参照:
庄司 英尚(しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、アイウェーブ社労士事務所 代表
社会保険労務士 人事コンサルタント

福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所(現・アイウェーブ社労士事務所)を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続き及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。

公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/

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