国のがん対策と事業主への3つの要請
2025.06.26
国のがん対策
事業主の方々には、国のがん対策を正確にご理解いただきたいと思います。
なぜなら事業主の方々は、国のがん対策の重要な担い手となっているからです。事業主の方々はがん治療と仕事の両立を支え、従業員さんをがんから守るために必要な具体的な要請を国から受けています。
国からの要請とは何か? 具体的にお話をさせていただきます。
なぜなら事業主の方々は、国のがん対策の重要な担い手となっているからです。事業主の方々はがん治療と仕事の両立を支え、従業員さんをがんから守るために必要な具体的な要請を国から受けています。
国からの要請とは何か? 具体的にお話をさせていただきます。
改正がん対策基本法
まず簡単に、がん対策基本法とその改正法についてのお話をさせていただきます。
2006年に成立したがん対策基本法は、国のがん対策の根幹をなす重要な法律です。
その法律が2016年に改正され、改正がん対策基本法が成立しました。この法律の中で、事業主の方々は、従業員さんをがんから守るための3つの要請を国から受けています。
改正がん対策基本法の中に、こんな文言があります。(*1)
がん対策の一層の充実を図るため、がん対策に関し、基本理念を定め、国、地方公共団体、医療保険者、国民、医師等及び事業主の責務を明らかにし、並びにがん対策の推進に関する計画の策定について定めるとともに、がん対策の基本となる事項を定めることにより、がん対策を総合的かつ計画的に推進することを目的とする。
2006年に成立したがん対策基本法は、国のがん対策の根幹をなす重要な法律です。
その法律が2016年に改正され、改正がん対策基本法が成立しました。この法律の中で、事業主の方々は、従業員さんをがんから守るための3つの要請を国から受けています。
改正がん対策基本法の中に、こんな文言があります。(*1)
がん対策の一層の充実を図るため、がん対策に関し、基本理念を定め、国、地方公共団体、医療保険者、国民、医師等及び事業主の責務を明らかにし、並びにがん対策の推進に関する計画の策定について定めるとともに、がん対策の基本となる事項を定めることにより、がん対策を総合的かつ計画的に推進することを目的とする。
*1:
改正がん対策基本法 第一章 総則(目的)第一条
法律の中で、事業主の方々のがんに対する責任が明らかにされたということです。
ここでポイントになるのが、事業主という言葉です。従業員数や資本金等の条件が一切ないため、日本で事業を行っているすべての事業主の方が対象になります。
この要請は努力義務となっているため罰則規定はありませんが、法律の中での努力義務ということは、「やってください!」ということだと思います。
ここでポイントになるのが、事業主という言葉です。従業員数や資本金等の条件が一切ないため、日本で事業を行っているすべての事業主の方が対象になります。
この要請は努力義務となっているため罰則規定はありませんが、法律の中での努力義務ということは、「やってください!」ということだと思います。
具体的な3つの要請事項
具体的な3つの要請事項について確認していきます。
1つ目の要請は、「がんになっても働き続けられる環境をつくること」です。
国立がん研究センターが2020年10月に発表したアンケート結果(*2)によると、がんと診断確定された患者さんの約2割の方がお仕事をお辞めになっています。
またお辞めになった方の56.8%が、初回治療開始までにお辞めになっていました。
仕事をお辞めになると収入が途切れてしまうだけでなく、職場からの一切の支援が受けられなくなってしまいます。
1つ目の要請は、「がんになっても働き続けられる環境をつくること」です。
国立がん研究センターが2020年10月に発表したアンケート結果(*2)によると、がんと診断確定された患者さんの約2割の方がお仕事をお辞めになっています。
またお辞めになった方の56.8%が、初回治療開始までにお辞めになっていました。
仕事をお辞めになると収入が途切れてしまうだけでなく、職場からの一切の支援が受けられなくなってしまいます。
*2:
国立がん研究センターが2020年10月に発表したアンケートの分析結果(専門的な医療を提供する全国166病院にて、2016年にがんと診断された約2万人を対象に行ったアンケートで、回答数7,080人です。)
2つ目の要請は、がん検診の受診を啓発することです。
多くの方々がご存じの通り、日本のがん検診受診率は欧米先進国と比べても極めて低い状況が続いています。今ではがんも早期発見が出来れば克服できる病気にもなってきているため、早期発見のためのがん検診受診が非常に重要です。
この要請については、がん検診の受診年齢に達している従業員さんが何人いて、そのうち何人ががん検診を受診したかということではなく、がんの診断確定のためには精密検査が必要なことから、会社の健康診断・人間ドック・がん検診等で要精密検査となった従業員さんが100%精密検査を受診しているかどうかを把握するよう、非常に踏み込んだ要請になっています。
3つ目の要請は、がんについて会社全体で正しく知ることです。
この要請は、従業員さんに対してがんの教育を行ってくださいという要請です。
日本では長い間、学校でのがん教育が行われていませんでした。日本の学校でがん教育が開始されたのは2017年からです。現在は、日本のすべての小学校・中学校・高等学校でがん教育が行われています。
もちろんお子さんに対するがん教育は重要なのですが、皆さんは国が本当にがん教育を行いたいと思っている対象がお子さんだと思われますか? 私はそうは思いません。
国が本当にがん教育を行いたいと思っている対象は、間違いなくがんの罹患年齢に達している、または近づいている我々社会人です。
ところが日本には、社会人に対してがん教育をする場がありませんし担い手もいません。そこで国は事業主の方々に対し、従業員さんのがん教育を行ってもらおうと考えました。
国は国民をがんから守るために、さらに医療費を抑制するために、がん対策に力を入れています。また医療費を抑制することは、日本が世界に誇る国民皆保険制度を維持することにもつながります。
そのために必要なことが、がんになりにくい生活習慣を身に付けること(生活習慣の改善)と徹底したがん検診の受診、また要精密検査となった場合の精密検査の受診です。
これらに関してはがん教育が必要となるため、事業主の方々の理解と協力が不可欠です。
今やがん対策は会社の規模を問わず、重要な経営課題となっています。
事業主の方々には会社と従業員さんとそのご家族をがんから守るために重要な国のがん対策を理解していただき、今すぐ具体的な取り組みを始めていただきたいと思います。
今回は国のがん対策と、その中で事業主の方々に求められている3つの要請についてお話をさせていただきました。
多くの方々がご存じの通り、日本のがん検診受診率は欧米先進国と比べても極めて低い状況が続いています。今ではがんも早期発見が出来れば克服できる病気にもなってきているため、早期発見のためのがん検診受診が非常に重要です。
この要請については、がん検診の受診年齢に達している従業員さんが何人いて、そのうち何人ががん検診を受診したかということではなく、がんの診断確定のためには精密検査が必要なことから、会社の健康診断・人間ドック・がん検診等で要精密検査となった従業員さんが100%精密検査を受診しているかどうかを把握するよう、非常に踏み込んだ要請になっています。
3つ目の要請は、がんについて会社全体で正しく知ることです。
この要請は、従業員さんに対してがんの教育を行ってくださいという要請です。
日本では長い間、学校でのがん教育が行われていませんでした。日本の学校でがん教育が開始されたのは2017年からです。現在は、日本のすべての小学校・中学校・高等学校でがん教育が行われています。
もちろんお子さんに対するがん教育は重要なのですが、皆さんは国が本当にがん教育を行いたいと思っている対象がお子さんだと思われますか? 私はそうは思いません。
国が本当にがん教育を行いたいと思っている対象は、間違いなくがんの罹患年齢に達している、または近づいている我々社会人です。
ところが日本には、社会人に対してがん教育をする場がありませんし担い手もいません。そこで国は事業主の方々に対し、従業員さんのがん教育を行ってもらおうと考えました。
国は国民をがんから守るために、さらに医療費を抑制するために、がん対策に力を入れています。また医療費を抑制することは、日本が世界に誇る国民皆保険制度を維持することにもつながります。
そのために必要なことが、がんになりにくい生活習慣を身に付けること(生活習慣の改善)と徹底したがん検診の受診、また要精密検査となった場合の精密検査の受診です。
これらに関してはがん教育が必要となるため、事業主の方々の理解と協力が不可欠です。
今やがん対策は会社の規模を問わず、重要な経営課題となっています。
事業主の方々には会社と従業員さんとそのご家族をがんから守るために重要な国のがん対策を理解していただき、今すぐ具体的な取り組みを始めていただきたいと思います。
今回は国のがん対策と、その中で事業主の方々に求められている3つの要請についてお話をさせていただきました。

高橋 義人(たかはし・よしひと)
株式会社M&Fパートナーズ 代表取締役
一般社団法人 健康事業支援機構 医療コーディネーター
ユニバーサルライフ株式会社 執行役員 東京第2支社長
1988年明治大学卒業後、外資系大手生命保険会社に23年間勤務。静岡・埼玉・大阪にて支社長を務め、2011年に独立。
その後、「がん治療とお金」のコンサルティング会社を設立し、現在に至る。
医療コーディネーターとしてがん患者と向き合い、患者目線に立った治療に関する情報提供・病院紹介・治療紹介・病院へのアテンド等の患者支援活動の傍ら、セミナー講師としてがん患者の目線に立ったがんに関する様々な講演を、日本全国で毎年150回以上行っている。
ホームページ https://mfpartners.co.jp
一般社団法人 健康事業支援機構 医療コーディネーター
ユニバーサルライフ株式会社 執行役員 東京第2支社長
1988年明治大学卒業後、外資系大手生命保険会社に23年間勤務。静岡・埼玉・大阪にて支社長を務め、2011年に独立。
その後、「がん治療とお金」のコンサルティング会社を設立し、現在に至る。
医療コーディネーターとしてがん患者と向き合い、患者目線に立った治療に関する情報提供・病院紹介・治療紹介・病院へのアテンド等の患者支援活動の傍ら、セミナー講師としてがん患者の目線に立ったがんに関する様々な講演を、日本全国で毎年150回以上行っている。
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