子どものいたずらで親に損害賠償責任が発生するの?

水谷 力
2025.06.23

子どものいたずらと親の責任
 報道によれば、小学生がマンションの高層階から投げた泥団子が、下にいた人の頭部を直撃して重症を負う事故があったようです。この事故の詳細は不明ですが、小学生の子どものいたずらで第三者に被害が発生した場合、誰に損害賠償責任が発生するのでしょうか?

 民法では、故意または過失によって他人の権利や利益を侵害した者は、その損害を賠償する責任を負うとされています。しかし、小学生の子どもの場合、自身の行為がどのような結果を招くかを完全に理解し、適切な判断を下す能力(責任能力)がまだ十分ではないと判断されることがほとんどです。つまり、通常は小学生の子どもには損害賠償責任が発生しないといえます。

 そして、子どもに責任能力がないと判断された場合は、その子どもを監督する立場にある親が、「監督義務者としての責任」を問われることになります。これは、「親が子どもを適切に監督していれば、その損害は防げたはず」という考えに基づいています。例えば、親の目の前で小学生の子どもが他人の物を壊したり、他人にケガをさせたりした場合などです。親が監督義務を怠っていなかったと証明できれば責任を免れる可能性もありますが、それを立証することは容易なことではありません。
保険で対応できるの?
 このような賠償責任が発生した場合に備えるにはどうすればよいかが気になりますが、これに備えるための保険があります。それが「個人賠償責任保険(名称は保険会社によって異なる)」です。

 これは、日常生活で被保険者が他人の物を壊したり、他人にケガをさせたりして、法律上の損害賠償責任を負った場合に、その損害賠償金を補償してくれる保険です。

 大きな特徴として、被保険者本人だけでなく、配偶者、子ども、同居の親族なども補償の対象となる点が挙げられます(補償の範囲は保険会社によって異なる)。そのため、小学生の子どもが引き起こしたいたずらによる損害賠償責任も、この保険でカバーすることができます。

 多くの場合、この保険は火災保険や自動車保険、傷害保険に特約として付帯できます。また、クレジットカードの付帯サービスとして、特に意識せずに加入している場合もあります。

 ただし、この保険は万能ではなく、補償の対象外となるケースもありますので注意が必要です。たとえば、以下のようなケースです。
故意による損害: 個人賠償責任保険は、不注意(過失)による事故を補償するものであり、故意に他人に損害を与えた場合は補償の対象外となります。
業務上の事故: 仕事中に発生した賠償事故は、個人賠償責任保険の対象外となります。(別途、事業用の賠償責任保険で対応できる場合があります)
まとめ
 小学生の子どものいたずらによって他人に損害を与えてしまった場合、親が監督義務者として賠償責任を負う可能性は十分にあります。このような万が一の事態に備えるためには、個人賠償責任保険への加入が有効です。

 保険料は補償金額にもよりますが、高くても年間数千円程度です。安心して日常生活を送るためにも必須の保険と言えます。
【参考情報】
生命保険の募集人の方は、上記のような損害保険の話から生命保険の話につなげることも可能です(詳しくは以下の書籍が参考になります)。個人賠償責任保険の話題からのアプローチトークも収録されています(第1章第3話子どもやペットいる家庭のリスクは?)。
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水谷 力(みずたに・ちから)
株式会社セールス手帖社保険FPS研究所
社会保険労務士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士
組織開発コンサルタント

大手保険会社在職中にFP資格やコーチング資格等を取得。現在は各種執筆活動などをおこなっている。著書には、「違いを生み出すファーストアプローチ」「違いを生み出す生損保リスクチェック」(いずれもセールス手帖社保険FPS研究所)がある。

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