全国の自治体で自転車保険の義務化広がる

高橋 浩史
2021.06.14

 通勤などでの自転車利用者の増加に伴い、賠償事故が起きたときのために、自転車保険の加入を義務化する自治体が増えています。
義務化の背景に高額な賠償事例
 2015年10月、兵庫県で自転車保険の加入が義務化されたのをきっかけに、全国で自転車保険への加入義務化が広がっているようです。義務化の背景として、高額な賠償事例への対応が挙げられています。

 2013年7月4日・神戸地裁の判決では、小学生の乗った自転車が60歳代の女性と正面衝突、女性は頭蓋骨骨折等により意識が戻らなくなりました。この事故に対して、9,521万円の賠償が命じられました(警視庁「交通安全情報」より)。

 このような高額な賠償事故への備えとして、被害者保護と加害者救済の両面から、自転車保険などへの加入を義務化する自治体が増えています。

 au損保のWEBサイトによると、全国で自転車保険などへの加入を義務化しているのは、東京都や神奈川県を始めとして23自治体(2021年4月1日時点)。

 加入率については、全国平均は59.5%。そのうち、加入義務化地域で65.3%、加入が義務化ではない地域で48.7%となり、当然かもしれませんが、義務化地域の方が16.6ポイント高い結果となっています(2021年3月4日 au損保ニュースリリースより)。
個人賠償責任特約でも賠償への備えは可能
 義務化・非義務化を問わず、自転車保険などへの加入が求められる時代ですが、あらためて入らなくても、現在加入している損害保険に「個人賠償責任特約」をつけている人も多いのではないかと思われます。

 筆者のもとにも、昨年、住宅購入に関する相談に訪れたお客さまから、「家を買って引っ越し、通勤に自転車を使うことになったので自転車保険の相談をしたい」という旨のメールが届きました。

 ただ、住宅ローンを借りて家を買ったのなら火災保険の加入が必須になるので、個人賠償責任特約を付けていないかどうか調べていただくように連絡しました。その結果、特約で個人賠償責任特約を付けていたとのことで、他人への賠償についてはこれで備えられることを伝えると安心したようでした。

 このように、義務化されていると知ると、自転車保険にと動きがちですが、まずは火災保険や自動車保険に入っている人なら、個人賠償責任特約がついているかどうかの確認が先決といえるでしょう。
<参考>
au損保:「自転車保険の加入義務化」ってなに?
au損保:ニュースリリース2021年3月4日
警視庁:「交通安全情報令和2・3」
高橋 浩史(たかはし・ひろし)
FPライフレックス 代表
日本ファイナンシャルプランナーズ協会CFP®
1級ファイナンシャル・プランニング技能士

東京都出身。デザイン会社などでグラフィックデザイナーとして20年活動。 その後、出版社で編集者として在職中にファイナンシャル・プランナー資格を取得。2011年独立系FP事務所FPライフレックス開業。 住宅や保険など一生涯で高額な買い物時に、お金で失敗しないための資金計画や保障選びのコンサルタントとして活動中。 その他、金融機関や出版社でのセミナー講師、書籍や雑誌での執筆業務も行う。
ホームページ http://www.fpliflex.com
ブログ http://ameblo.jp/kuntafp/

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