企業の半数以上が「熱中症対策の義務化」を認知

庄司 英尚
2025.06.23

建設業界では約8割が認知
 株式会社帝国データバンクは、全国1,568社を対象に、熱中症に関する認知や対策についてアンケート調査を実施し、調査結果を5月に発表した。2025年6月1日に改正労働安全衛生規則が施行され、熱中症対策が事業者に義務付けられたこと、熱中症対策が求められる時期ということから同調査結果が企業の注目を集めている。

 「熱中症対策の義務化」を認知している企業は、「詳しく知っている」(15.6%)と「なんとなく知っている」(39.5%)を合わせると半数以上(55.2%)を占めた。なかでも作業環境上、義務化の対象となることが多い「建設」業界では約8割の企業が認知しており、全体を大幅に上回る結果となった。
連絡体制の整備や重篤化を防ぐための手順を定める必要がある
 今回の改正により、熱中症になるおそれがある作業を行う際は、「体制整備」「手順作成」「関係者への周知」が事業者に義務付けられた。対策を怠った場合は、6か月以下の懲役、または50万円以下の罰金が科されることになっており真摯に取り組まなければならず早急に着手したいところだ。

 熱中症になるおそれがある作業とは、WBGT値(暑さ指数)28度以上または気温31度以上の環境下で連続1時間以上または1日4時間を超えて実施が見込まれる作業のことだ。

 体制整備とは、「熱中症の自覚症状のある作業者」や「熱中症のおそれがある作業者を見つけた者」がその旨を報告するための体制整備及び関係作業者へ通知することである。具体的には、作業場の責任等報告を受ける者の連絡先と連絡方法を定め、明示し、随時報告を受けられる体制を整えるようにする。

 手順作成とは、熱中症による重篤化を防止するために必要な措置(作業離脱、身体冷却、医療機関への搬送等)の内容と実施手順の作成を行うことである。

 関係者への周知は、上記の体制整備や手順作成について、作業者に確実に伝わるよう、事業場での掲示、メール送付、文書配布、朝礼での伝達など必要に応じて複数の手段を組み合わせて行うことである。
熱中症の把握・対処に関連する対策の実施は低い傾向にある
 熱中症対策について何らかの対策を行っている、または検討している企業は95.5%とかなり高い割合であったが、その対策内容を尋ねる(複数回答)と、「クールビズの実践(制服や作業服の変更などを含む)」(70.5%)がトップで、以下は「扇風機やサーキュレーターの活用」(60.7%)、「水分・塩分補給品の支給」(55.7%)、「ファン付きウェアやサングラスの活用」(36.9%)、「空調設定の見直し」(30.4%)が続き、熱中症予防に関連する対策が上位に並んだ。

 一方、「熱中症予防・重篤化防止の学習と周知」(23.1%)、「熱中症に関する報告体制の構築」(15.2%)、「搬送先など緊急連絡先の周知」(13.0%)、「職場巡視やバディ制、ウェアラブル機器などによる熱中症の把握」(4.8%)など熱中症の把握・対処に関連する対策の実施割合は低い傾向にあることがわかった。

 日本気象協会のウエブサイトでは、「6月から8月の気温は、全国的に平年より高いでしょう。南から暖かく湿った空気が流れ込みやすいため、湿度が高く、蒸し暑い日が多くなりそうです。早めの熱中症対策が必要です」と注意喚起をしている。夏本番になる前に、補助金など公的支援の活用も検討して自社に合った熱中症対策を強化してほしい。
参照:
庄司 英尚(しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、アイウェーブ社労士事務所 代表
社会保険労務士 人事コンサルタント

福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所(現・アイウェーブ社労士事務所)を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続き及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。

公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
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