事業承継時に焦点を当てた「経営者保証に関するガイドライン」の特則の取組状況

高田 康正
2021.06.28

 令和2年4月から事業承継時に焦点を当てた「経営者保証に関するガイドライン」の特則の適用が開始されています。この特則は、ガイドラインを補完するものとして、主たる債務者、保証人および対象債権者のそれぞれに対して、事業承継に際して求め、期待される具体的な取扱いを定めたものです。
特則で示された二重徴求を許容する例外的4事例
 事業承継時の経営者保証の取扱いについては、原則として前経営者、後継者の双方から二重に保証を求めること(二重徴求)を原則禁止、例外的に二重徴求が真に必要な4つの事例を限定列挙し、拡大解釈による二重徴求が行われないようにする、としています。
【例外的に二重徴求が許容される事例】
事務手続完了後に前経営者等の保証解除が予定されている中で、一時的に二重徴求となる場合
前経営者が引退等により経営権・支配権を有しなくなり、後継者に経営者保証を求めることが止むを得ないと判断された場合において、前経営者に対する保証を解除することが著しく公平性を欠くことを理由として、後継者が前経営者の保証を解除しないことを求めている場合
金融支援を実施している先、又は返済が事実上延滞している先であって、前経営者から後継者への多額の資産等の移転が行われているなどの特段の理由により、当初見込んでいた経営者保証の効果が損なわれるため、前経営者・後継者の双方からの保証を求めなければ金融支援を継続することが困難となる場合
前経営者・後継者の双方から、専ら自らの事情により保証提供の申し出があり、特則上の二重徴求の取扱いを十分説明したものの、申し出の意向が変わらない場合
 また、後継者からの保証については、後継者に対し保証を求めることで事業承継が頓挫する可能性等も考慮し、ガイドラインの要件を満たしていない場合でも、事業承継計画の内容等をもとに、後継者から保証を求めないこととできないか柔軟に検討、やむを得ず保証を求める場合でも、後継者の負担が最小限にならないか検討する、としています。
ほとんどの金融機関において、原則として二重徴求を行わない方針
 令和3年6月3日、各金融機関の態勢整備等の状況を確認するためのアンケート調査(対象:510金融機関)の結果が公表されました。

 「前経営者、後継者双方からの二重徴求」の自行(庫・組合)の方針については、「特則の適用開始を受けて、新たに、原則、二重徴求は行わない方針とした」が61%、「特則の適用開始以前から、原則、二重徴求は行わない方針としており、特則を踏まえ、引き続き、原則、二重徴求は行わない方針としている」が34%と、ほとんどの金融機関において、原則として二重徴求を行わない方針が徹底されています。

 事業承継時に二重徴求している事例については、前述①が22%、②が35%、③が19%、④が24%となっています。また、二重徴求となった場合(特則適用開始前より二重徴求となっている場合を含む)、その状態が継続しないよう適切に管理・見直しを行うため、どのような体制整備・取組を行っているかについては、「本部が関与する定期的な事後フォローの体制を整備している」が37%、「本部関与はないが、管理・見直しの体制を整備している」が14%、「管理・見直しの体制整備は講じていない」が49%と、管理・見直し体制が整備されていない金融機関が半数見られ、こうした金融機関については、各金融機関の実情に応じた体制整備が求められます。
参照:
(セールス手帖社 高田康正)

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