下宿生の私立大学入学の年にかかる費用は約300万円

森田 和子
2021.06.28

 教育費の中でも負担が大きいのは大学の進学費用です。心配している保護者の方も多いのではないでしょうか。首都圏の私大新入生の家計負担について調査結果が発表されています。確認していきましょう。
自宅通学者の「受験費用」+「初年度納付金」は過去最高
 東京私大教連(東京地区私立大学教職員組合連合)は、2020年4月に首都圏の私立大学・短期大学に入学した新入生の家計負担についての調査結果を発表しています。自宅通学者と自宅外通学者に分けて見ていきましょう。

 自宅通学者の「受験費用」は前年度から1万700円増えて25万7,800円となっています。大学の受験料は3万5,000円程度かかりますが、複数校を受験する一般選抜(一般入試)では、受験料だけで数十万円になることもあるので予算に入れておく必要があります。大学に納める「初年度納付金」は134万723円となっており、「受験費用」+「初年度納付金」の合計金額は過去最高額の159万8,523円となっています。
受験費用:東京私大教連「私立大学新入生の家計負担調査 2020年度」
初年度納付金:文部科学省「令和元年度 私立大学入学者に係る初年度学生納付金平均額(定員1人当たり)」。
自宅外通学者の「敷金・礼金、家賃」が増加
 自宅外通学者では、「敷金・礼金」が22万5,300円、「家賃」は月6万4,200円で、いずれも増加しています。一方で、仕送り額は6月以降(月平均)8万2,400円で過去最低であり、家賃を除いた1日あたりの生活費はわずか607円となっています。

 自宅生の受験費用が増えるのに反して、自宅外通学者では受験費用が25万100円と減少しています。自宅外通学者の仕送り額も含めた「入学の年にかかる費用」は295万5,623円であり、これは家庭の年収の約3割を占めています。下宿生の学費は家計の大きな負担となっており、下宿生の生活が厳しくなっていることがわかります。
入学費用の「借入額」は約181万円
 学費などの「入学に必要な費用」を借入れした家庭は 17.4%、借入額の平均は、自宅通学者では 158 万 3,000 円、自宅外通学者では215 万7,000 円、平均では180万9,000円となっています。

 受験から入学までの費用の「負担感」については、「たいへん重い」と「重い」とする家庭を合計すると92.2%です。入学費用を借入れした家庭の 99.4%が「重い」と感じており、住居別では自宅外通学者の93.9%の家庭が「重い」と感じています。
奨学金を「希望する」は約6割、うち実際の申請者は6割弱に減少
 日本学生支援機構などの奨学金を「希望する」は全体で 56.9%ですが、希望者のうち奨学金を「申請した」は 56.7%です。奨学金を希望したけれど申請しなかった理由のうち、「申請基準にあわない」が 53.3%で、初めて 5 割を超えています。奨学金を希望すれば必ず利用できるわけではないことには注意が必要です。次いで、「返済義務がある」が22.2%となっており、返済への不安から貸与型奨学金を申請しない状況が伺えます。

 奨学金には、卒業後に返済する貸与型の他に、返済する必要がない給付型があるので情報を収集しましょう。志望校のパンフレットやホームページには奨学金の情報があります。また、日本学生支援機構のホームページでは、日本学生支援機構以外の奨学金も検索できるようになっています。
参考:
森田 和子(もりた・かずこ)
FPオフィス・モリタ 代表
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®認定者、DCA(確定拠出年金アドバイザー)

大学卒業後、コンピュータソフト会社、生命保険会社勤務を経て、1999年独立。保険や投資信託の販売をしない独立系のファイナンシャル・プランナー事務所としてコンサルティングを行っている。
お金の管理は「楽に、楽しく」、相談される方を「追い詰めない」のがモットー。情報サイト・新聞・雑誌への執筆多数。企業・学校・イベントで行うマネープランセミナー・講演も好評。

FPオフィス・モリタ http://okane-net.com/

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