在宅勤務の従業員に対して企業が行う食費補助は課税対象?

堀 雅哉
2021.07.01

 新型コロナウイルス感染症に対する感染予防策の一環として、昨年来より在宅勤務がますます広がりを見せているが、各企業では従業員が円滑に在宅勤務を行うためのさまざまな支援を行っており、その一つとして、在宅勤務時の昼食費などの食費補助を行っているケースも多いようだ。国税庁が作成・発表している「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)」(当稿の執筆現在、5月31日更新版が最新)でも取り上げられているテーマであり、その内容を確認することで食費補助の税務を確認することとする。
企業が従業員に対して食事の支給を行う場合の税務の考え方
 企業が従業員に食事を支給する場合の税務については、「所得税基本通達36-38の2 食事の支給による経済的利益はないものとする場合」においてその考え方が定められおり、以下の要件(概要)を満たす場合には、役員や従業員が企業からの食事の支給により受ける経済的な利益はないものとして取り扱うこと(つまり、給与課税は発生しない)としている。
企業が役員や従業員に対して支給した食事について、当該役員や従業員から当該食事の価額の50%以上を企業が徴収していること
食事の価額から役員や従業員から徴収した対価の額を控除した残額が、月額3,500円(消費税および地方消費税(以下、消費税等)の額を除く)を超えないこと
 コロナ感染予防対策として在宅勤務をしている従業員に対して食事を支給する、食費の補助をする場合においてもこの考え方が適用されることとなる。緊急措置的な特別な取扱いが定められている訳ではない。
在宅勤務者への昼食の補助を行う場合の事例の確認
 「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)」では、在宅勤務時の昼食について企業が補助を行う場合の取扱いが具体的なクエスチョンとして取り上げられている。

 例えば、企業が毎月7,560円分の食券を従業員に交付し、従業員はその半額の3,780円を企業に支払うこととした場合、従業員の負担額は食券支給額の50%相当額であり、企業の負担額は毎月3,780円、これは実際の支払額ベースで消費税等の額が含まれており、全額軽減税率の対象としても企業負担額は消費税等の金額別で3,500円となり、「所得税基本通達36-38の2」の要件を満たし、課税は不要と判断できる。

 また、別の事例として、出勤日には企業が契約業者から購入する弁当を支給し、それとは別に在宅勤務日には昼食の補助として食券を支給するという、在宅勤務日と出勤日の双方で別々の食費の補助と食事の支給を行うケースが取り上げられているが、こちらも基本的な取扱いは同様であり、従業員の負担額の割合や、従業員負担額を控除した企業の負担額の算出については、食券と弁当の金額を合算して判定を行うこととなる。

 ただし、「所得税基本通達36-38の2」の取扱いは、日々の昼食等に対する補助を目的とするものを対象としており、食券の未使用分を繰り越して一度に多額の食事のために食券を利用するようなことは認められない。そのため、1回の食券の利用については一般的な昼食等としての相当額の範囲を逸脱しない限度額の設定や、食券の利用可能期間の設定などをあわせて行うことが必要となる。

 ワクチンの接種等により、新型コロナウイルス禍の影響の一日も早い収束が待たれるが、その収束後も在宅勤務がさらに浸透することも予想されるため、考えられる様々な事例についての知識を今のうちから蓄積することも効果的かもしれない。
(参考)
国税庁:「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)」令和3年1月(令和3年5月31日更新)
(セールス手帖社 堀 雅哉)

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