国民年金の全額免除・猶予者、コロナ禍で過去最多

庄司 英尚
2021.07.19

所得減少により免除者等も増加
 厚生労働省は、6月28日、令和2年度の国民年金の加入・保険料納付状況を取りまとめ公表した。国民年金の全額免除・猶予者は、前年度比26万人増の約609万人となり、基礎年金制度が導入された1986年度以降、過去最多となった。この結果はコロナ禍による所得減少、経済の低迷の影響が大きいものと思われる。609万人は、国民年金の第1号被保険者の約4割以上であることも押さえておきたい。

 国も様々な免除制度を導入しており、免除等対象者への免除等の周知・勧奨などをこれまで行ってきている。また、免除手続きの簡素化も進んでいる。一方、納付方法が多様化して気軽にコンビニなどから納付できるようになり、少子高齢化で納付義務者が少なくなっていることも影響していることから、令和2年度の現年度納付率は71.5%(前年度比2.2ポイント増)となっており、平成23年度の現年度納付率から9年連続で上昇している。
最終納付率は77.2%
 国民年金の納付率を見るときには「最終納付率」のデータも大事である。国民年金保険料の納付率は、納付義務がどれだけ果たされているかという納付状況を見る指標だ。納付対象月数に対する納付月数の割合として算出しているものなので、途中経過を示す「現年度納付率」及び「過年度1年目納付率」を見ながら最終納付率にも注目しておくべきである。

 実際に免除や猶予を受けている人もいるが、一方で免除申請するほどではなく、今はちょっと余裕がないけど就職したらすぐに支払うつもりの人もいる。納付期限は原則2年(免除者等は追納により10年)となっているので、その間に納めれば将来の年金額に反映される。つまりこの2年が大事な期間となり、その期間も含めた最終納付率の推移も過去と比較してどのように変化しているのかも理解しておきたい。

 今回公表された資料によると、令和2年度の最終納付率(平成30年度分保険料)は77.2%となり、令和元年度の最終納付率(平成29年度分保険料)から0.9ポイント伸びていることは良いニュースといえるだろう。ただし、納付率の計算には上記の609万人は含まれていないので、納付率という数値だけでなく、第1号被保険者のうち実際に納付している人の割合についてもある程度理解し、全体像を見ておくことも重要である。
参照:
庄司 英尚(しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、アイウェーブ社労士事務所 代表
社会保険労務士 人事コンサルタント

福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所(現・アイウェーブ社労士事務所)を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続き及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。

公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/

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