注意したい特殊詐欺の手口と被害防止のポイント

栗原 賢二
2021.07.26

 いわゆるオレオレ詐欺をはじめとした特殊詐欺の被害は、日頃から注意喚起が行われている中でも無くなる気配がありません。自分はもちろん、身近な人が巻き込まれないためにも、最近のデータや手口について確認しましょう。
昨年の被害状況と主な手口
 警察庁の広報資料によると、令和2年の特殊詐欺認知件数は13,350件、被害額は285.2億円にのぼります。いずれもここ数年は緩やかな減少傾向ですが、依然として深刻な状況です。泣き寝入りのケースも含めれば、これより多数(多額)の被害が生じているでしょう。1件あたりの被害額も平均220.2万円と、生活への影響が懸念される水準となっています。報告されている特殊詐欺の主な手口は、以下の通りです。
オレオレ詐欺
親族が起こした事件・事故に対する示談金等の名目で、金銭等を騙し取る手口
預貯金詐欺
「口座が犯罪に利用されておりキャッシュカードの交換が必要」といった名目で、キャッシュカード、クレジットカード、預金通帳等を騙し取る手口
架空料金請求詐欺
未払いの料金があるなど架空の事実を口実とし、金銭等を騙し取る手口
還付金詐欺
税金還付等に必要な手続きを装ってATMを操作させ、口座間送金により不法の利益を得る手口
キャッシュカード詐欺盗
「不正に利用されている」といった名目で準備させたキャッシュカード等を、隙を見るなどして盗み取る手口
その他の手口
融資保証金詐欺、金融商品詐欺、ギャンブル詐欺、交際あっせん詐欺など
 被害を受けた人の年齢層は65歳以上が85.7%と圧倒的ですが、架空料金請求詐欺などは比較的若い世代も騙されやすいため注意が必要です。
付け入る隙を与えない行動の徹底を
 特殊詐欺の犯人が最初に使う連絡手段は電話、電子メール、はがき・封書等があり、手口によって使われやすいものが異なります。オレオレ詐欺や還付金詐欺はほぼ全て電話によるコンタクトですが、架空料金詐欺では電子メールが約6割という内訳です。

 また、犯行に要する情報(住所、氏名、現金の保有状況など)をあらかじめ探る予兆電話は、年間で98,472件確認されています。特に悪質な関連犯罪では被害者側に事前電話をかけ、資産状況等を聞き出したうえで強盗を敢行するケースも11件ありました。

 警察庁や各都道府県警では被害防止のため、様々な形で注意喚起や事業者との連携を行っています。警察庁のWebサイト「SOS47特殊詐欺対策ページ」では実際の犯行時にあった電話の音声データも公開されているため、参考に聴いてみるのも良いでしょう。被害防止の基本として「電話でお金の話が出たら一旦切る」「常に留守番電話機能を設定しておく」「個人情報や暗証番号を教えない」といった行動の徹底により、付け入る隙を与えないことが大切です。不審な電話を受けた時の相談先は本物の家族をはじめ、警察相談専用窓口(#9110)や、消費者ホットライン(188)も有効な選択肢です。

 特殊詐欺の犯行グループが協力者を募る際、SNSをよく使用するのも近年の特徴です。例えば「その場でお給料」「最低10万から平均20、30万」「ブラックですが安全対策しっかり」といった募集文面で、加担のハードルを下げています。生活に困窮している人や学生を呼びかけのターゲットとしていると思われますが、苦しいからといって犯罪に手を染めては元も子もありません。身近な人が特殊詐欺の被害者になるのはもちろん、加害者側に回らないよう、現在の暮らしぶりをよく把握することもポイントの一つです。
参考:
(セールス手帖社 栗原賢二)

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