二次健康診断等給付とは?

庄司 英尚
2021.09.06

労災保険からの現物による給付
 近年、定期健康診断による有所見率(医師の診断が異常なし以外の者の占める割合)が増加傾向にある。職場の定期健康診断等(以下、一次健康診断)で異常の所見が認められた場合、該当者は脳血管・心臓の状態を把握するための二次健康診断、脳・心臓疾患の発症の予防を図るための特定保健指導を、1年度内に1回負担なしで受けることができる。これらの給付が「二次健康診断等給付」である。2001年4月1日からスタートしており、労災保険による現物給付の形で行われている。今回はその概要を整理しておくこととする。
 給付の要件は、一次健康診断の結果、次のすべての検査項目について、「異常の所見」があると診断されたときは二次健康診断等給付を受けることができる。
(1)
血圧検査
(2)
血中脂質検査
(3)
血糖検査
(4)
腹囲の検査またはBMI(肥満度)の測定
 なお、一次健康診断の担当医師が上記(1)~(4)の検査項目について「異常なし」と診断したとしても、事業場が選任した産業医等が就業環境等を総合的に勘案して「異常」の所見を認めた場合は、産業医等の意見が優先される。ただし、労災保険の特別加入者、すでに脳血管疾患または心臓疾患の症状がある人は対象外となるので、ここは押さえておきたい。
受診から手続きまでの流れを理解する
 二次健康診断等給付には、二次健康診断と特定保健指導の2つがある。二次健康診断は、脳血管と心臓の状態を把握するために必要な検査を行う。また、特定保健指導は、二次健康診断の結果に基づいて、医師や保健師が面接して脳・心臓疾患の発症の予防を図るための保健指導(生活・栄養・運動指導)を行う。

 二次健康診断等給付は、労災病院または都道府県労働局長が指定する病院・診療所(以下、健診給付病院等)で直接無料で受診することができる。二次健康診断等給付を希望する労働者は、「二次健康診断等給付請求書」に必要事項を記入し、事業主の証明を受けて、一次健康診断の結果を証明できる書類とともに、健診給付病院等を受診の際にそれらを提出する(その後、同病院から所轄都道府県労働局長へ提出される)。

 なお、二次健康診断等給付の請求は一次健康診断の受診から3カ月以内と期間が短いので、ここは注意しておきたいところである。
参照:
庄司 英尚(しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、アイウェーブ社労士事務所 代表
社会保険労務士 人事コンサルタント

福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所(現・アイウェーブ社労士事務所)を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続き及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。

公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/

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