令和2年度のe-Tax利用件数 5000万件を突破!

堀 雅哉
2021.09.27

 国税庁では、デジタルガバメント実現に向けた政府の方針に基づいて、e-Tax(国税に関する各種の手続について、インターネット等を利用して電子的に手続が行えるシステム)の普及と定着を図る取組みを行っているが、このほど、令和2(2020)年度におけるe-Taxの利用状況が発表された。
e-Tax利用件数全体は対前年度18.4%の増加
 令和2年度において、申告・納付や証明書類の交付請求、法定調書の提出等にe-Taxが利用された件数は約5003万件で、対前年度(令和元年度)比で18.4%の増加となった。平成29年度との比較では38.8%の増加であり、順調な増加基調にあると考えられる。

 主要手続別に利用率も公表されているが、所得税申告手続きでの利用率は64.3%(令和元年度比プラス4.4ポイント、平成29年度比プラス9.8ポイント)、法人税申告では88.4%(令和元年度比プラス1.3ポイント、平成29年度比プラス8.4ポイント)であり、申告手続きにおけるe-Tax利用の定着化の進行が見て取れる。一方、納税証明書の交付請求(10.9%)や給与所得の源泉徴収票等に関するもの(66.7%)、利子等の支払調書に関わる手続き(25.5%)については、e-taxの利用率はまだまだ低水準の状態にある。
大法人は令和2年度から法人税等の申告においてe-Taxが義務化
 e-Taxの利用状況がこのように進行している要因の一つとして、税制におけるe-Taxの義務化や要件化があると考えられる。特に法人については、平成30年度税制改正によって、所定の要件に該当する大法人を対象に令和2年4月以降に開始する事業年度(課税期間)から、法人税および地方法人税(法人の地方税つまり法人住民税および法人事業税も対象)、ならびに消費税および地方消費税を対象としてe-Taxの義務化が適用されている。

 e-Tax義務化対象の法人の要件は、法人税および地方法人税の対象となるのは①内国法人のうち、事業年度開始の時において資本金の額等が1億円を超える法人、②相互会社、投資法人および特定目的会社に該当する法人で、対象となる手続きは確定申告書、中間(予定)申告書、仮決算の中間申告書、修正申告書および還付申告書である。また、消費税および地方消費税ではこれに加えて国及び地方公共団体も義務化の対象となっている。法人税申告のe-Tax利用率の推移を見ると、平成29年度ですでに80%の水準であり、義務化に向けた取り組みが該当する法人において進められた形跡が感じられる。

 また、その他にもe-Taxを推進する例として、令和2年分以降、青色申告の「青色申告特別控除」における控除最高額65万円を適用するための要件の一つにe-Taxによる電子申告を含めるなど、税制上の特典を適用するための要件としているケースも見られる。
次々と広がるe-taxの利用可能範囲
 相続税の申告については、令和元年10月1日からe-Taxの利用が可能となった。その利用状況については令和2年度の利用件数は約2万件、利用率は15.4%という水準であるが、今後さらなる利用の促進が見込まれる。また、令和2年6月からは新たに「石油ガス税及び揮発油税(地方揮発油税を含む)」の申告についてもe-Taxでの受付が開始されている。

 昨年と今年の申告・納税については、新型コロナ禍を考慮して確定申告期間の延長などの諸対応が行われたが、外出自粛などの影響もe-Taxの利用促進の要因の一つになっていると考えられる。今後、デジタルガバメント実現の一環として、e-Tax定着推進に向けた取組が継続して行われると思われるが、今回の報告において、e-Taxの利用満足度が67.5%(対前年比マイナス6.7ポイント)、国税庁HP「確定申告書等作成コーナー」の利用満足度が88.3%(対前年比マイナス4.3ポイント)と対前年比で悪化の傾向が見られる。これについて、国税庁では「コロナ禍で初めてe-Taxを利用された方が、手続や操作に手間取ったことなどが影響している」と分析しているが、今後さらなる利用者増加のためには、e-Taxにおけるさらなる利便性や操作性の向上が、ますます求められることになると考えられる。
(参考)
国税庁「令和2年度における e-Tax の利用状況等について」(令和3年8月)
(セールス手帖社 堀 雅哉)

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