ホームヘルパーの4人に1人が65歳以上!

田中 元
2021.09.30

ヘルパーの平均年齢も55歳に迫る勢い
 在宅で介護保険サービスを使っている要介護者のうち、3割以上で利用しているのが「訪問介護」だ。それだけ要介護者の在宅生活にとっては、必須のサービスといえる。

 その「訪問介護」について、一部報道等で示されたデータが反響を呼んでいる。公益財団法人・介護労働安定センターが2020年度に実施した介護労働実態調査(※1)から引用されたもので、対象となるのは「(介護サービスの)全従業員数に占める65歳以上の割合」だ。

 それによれば、訪問介護を提供する訪問介護員(以下、ヘルパー)のうち、「65歳以上」の割合は25.6%。ヘルパーの4人に1人が高齢者と定義される年齢となっている。(施設や通所系サービス等に勤務する)介護職員が9.4%、看護職員が13.1%、介護支援専門員(ケアマネジャー)が9.3%であるのと比べ、いかに突出しているかが分かる。
 ちなみに、ヘルパーの平均年齢は54.1歳。介護サービス全体でも49.4歳なので全産業平均と比べてやや高めだが、その中でもヘルパー年齢の高さが際立っている。在宅の要介護高齢者の多くが利用する訪問介護について、利用者と年代の近い「高齢層」によって支えられているという構図が浮かび上がる。
※1
一方で、30歳未満ヘルパーは4%足らず
 もちろん昔と比べて、高齢期にさしかかった人材でも体力・思考力は若者にひけをとらないケースも多い。その点では、ヘルパーの年齢層の高さそのものは、さして悲観することはないという考え方もあるだろう。

 問題は、65歳以上が4人に1人という割合に比して、若い世代が極めて少なくなっている点だ。たとえば、30歳未満のヘルパーの割合はわずか3.8%(※1)。10年前となる2010年度調査でも4.9%(※2)と決して高くはないが、そこから若年層割合はさらに一段低くなっている。当然ながら、訪問介護という事業そのものの将来性が危ぶまれる状況にあると言える。

 もう1つ注意したいのが、ヘルパーの離職率だ。ヘルパーに(施設等の)介護職員を加えた2職種の合計では14.9%と、2005年度の調査開始以来最低となった。介護人材は依然として採用困難な人手不足状況が続くが、現役従事者の勤務継続の意欲は高まっている。ところが、ヘルパーについては、昨年度(2019年度)よりも離職率は上昇している。(※1)

 さまざまな理由が考えられるが、1つは2020年度調査時における新型コロナウイルスの感染拡大の影響だ。コロナ禍においては、利用者の重症化リスクはもとより、サービス提供側であるヘルパー側も高齢化による重症化リスクが無視できない。環境的に感染対策が必ずしも十分とはいえない「一般宅」を訪問する中では、職務上の不安感の高まりが離職動機となりえる可能性はあるわけだ。
※2
10月からは新規制も。訪問介護の将来は?
 いずれにせよ、高齢期を迎えたヘルパーであれば、遠くない将来に漸次引退を迎える。調査では、定年到達後の「再雇用制度」を(年齢の定めなしで)導入する事業所も一定程度見られるが、そうしたしくみが機能するのも限度があるだろう。若い世代が後を担う状況になければ、サービス量そのものが減少するのは避けられない。

 そうした折も折、国は今年10月から介護保険のケアプランについて、訪問介護を一定以上位置づけているケースを行政のプラン点検の対象にする施策を打ち出した(※3)。背景にあるのは、やはり給付費の適正化だ。これにより、ケアマネジャーによる訪問介護の利用調整が抑制される可能性も指摘されている。

 要介護者にとって、「生活の要」ともいえる訪問介護がどうなっていくのか。そろそろ国民的な議論が必要になるかもしれない。
※3
田中 元(たなか・はじめ)
 介護福祉ジャーナリスト。群馬県出身。立教大学法学部卒業後、出版社勤務を経てフリーに。高齢者介護分野を中心に、社会保障制度のあり方を現場視点で検証するというスタンスで取材、執筆活動を展開している。
 主な著書に、『2018年度 改正介護保険のポイントがひと目でわかる本』『《全図解》ケアマネ&介護リーダーのための「多職種連携」がうまくいくルールとマナー』(ぱる出版)など多数。
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