来年10月から月内2週間の育児休業も社会保険料免除に

庄司 英尚
2021.10.04

給与計算に関係する大事な改正
 育児・介護休業法の改正が順次施行予定であるが、それにあわせて健康保険法・厚生年金保険法も改正されることとなった。来年10月からは社会保険料免除の仕組みが少し変更になる。

 給与計算と大きく関係してくるところでもあり、実務も複雑になるので早めに整理しておかないといけない。最近、男性従業員から育児休業に関する相談が人事労務担当者へ増えてきている。お金に関係するところはとても重要なので、間違った回答をしてしまうことのないよう正確に押さえておきたい。
2週間程度の育児休業を検討する男性が増えるかも?
 現在の社会保険料の徴収は、育児休業を開始した日の属する月から、その育児休業が終了する日の翌日が属する月の前月までの月の保険料が免除されることになっている。具体的にいうと、育児休業の終了が月の末日ならその月の社会保険料は免除されるが、1カ月のほとんど(例えば26日や27日まで)を育児休業で占めていても終了日が月の末日でない限りその月の社会保険料は免除されない。利用者にとっては使い勝手の悪い制度といえよう。

 法改正により、短期の育児休業の取得については、月内に2週間以上の育児休業を取得した場合、当該月の保険料を免除することになる。2週間以上という一定の期間要件は新たに必要になったが、例えば最短2週間取得した場合など、同じ月内で育児休業が終わってしまうようなケースでも当該月の社会保険料は免除になる。改正後は、2週間~1カ月程度の育児休業を取得しようとする男性が増えるのではないだろうか。
賞与は1カ月を超える育児休業期間が必要
 次に、賞与に係る社会保険料については1カ月を超える育児休業を取得している場合に限り、免除の対象とすることとなった。ちょうど賞与支給月が関係するところで育児休業を取得する方、とくに短期の育児休業を取得する男性も増えてきており、要件に該当すれば社会保険料が免除になるわけだが、1カ月を超える育児休業という要件になるのでそこは通常の給与と違っていることを理解しておきたい。

 最後に、育児・介護休業法の改正により、今後は実務が複雑になることに加えて育児休業制度を利用しようとする従業員からの相談は増え、今回の社会保険料の免除に関する内容に加えて、ハラスメントに関する相談が一層増えてくると予測される。部下から育児休業等に関する相談や申出を受けた際、上司の言動がハラスメントに該当するような場合はその後に大きなトラブルに発展する可能性があるので注意しなければならない。

 育児休業に関連する制度は、これだけ促進されている中では当事者だけでなく上司も含めて従業員全員がその内容をよく理解しておかなければならず、会社は社内研修とあわせて内容を周知していき、誰もが育児休業を利用しやすい職場風土を醸成していく必要があるといえるのではないか。
参照:
庄司 英尚(しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、アイウェーブ社労士事務所 代表
社会保険労務士 人事コンサルタント

福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所(現・アイウェーブ社労士事務所)を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続き及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。

公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/

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