成年年齢の引き下げについて

田中 一司
2021.10.21

民法改正で2022年4月より成年年齢が引き下げられる
 2022年(令和4年)4月1日に民法の成年年齢が20歳から18歳に引き下げられる。このことは募集活動やFP業務にも大きな影響を与えてくる。以下では、必ずしもこれらに限定せず、成年年齢の引き下げがなされると、どのようなことになるか見てみたい。

 まず考えられるのは、18歳で成年になることにより、未成年者としての法律行為の制限がなくなる。現状では、未成年者が親権者または未成年後見人(以下単に親権者という)の同意を得ずに法律行為をした場合、原則として取り消すことができる。例えば、相続の結果未成年者のものとなった不動産を、親権者の同意なく売った場合など、後日その売買を取り消すことができる。もちろん、例外として取り消すことができない場合もあるが、ここでは触れない。

 生命保険募集人から見て、未成年者の法律行為としてなじみが深いのが生命保険の契約であろう。一般に未成年者が契約者または被保険者となるときには親権者の同意が必要となる。高校生の子供が、親に内緒で生命保険契約を締結した場合、クーリング・オフとは関係なく、本人または親権者が取り消すことができる。ただし、生命保険会社では、「未成年者が結婚している」「未成年者が18歳以上で就職している」などの場合には親権者の同意なく契約締結を認めることもある。現在でも未成年者が婚姻をした場合は成年として扱われ、生命保険契約を含めた法律行為に親権者の同意は不要である。また、成年年齢引き下げ後は18歳になれば、単独で法律行為ができるため、18歳以上で就職していない者、例えば学生などでも親権者の同意なく契約締結ができることになる。ちなみに、未成年者を保険金受取人に指定する場合、未成年者自身の行為ではないため、親権者の同意は不要である。
年齢の引き下げにあたって留意したいこと
 新契約締結以外に考えられるケースとしては、保険金や給付金の請求がある。これらも18歳以上であれば自分だけで請求できるようになるわけであるが、注意しなければならない場合として、親が契約者、子供が被保険者である契約の入院給付金などである。入院給付金等の受取人が、一般に被保険者となるので、この場合、子どもからの請求となる。今までは、親が法定代理人として子供の名前で請求することができたが、今後18歳以上の子供の場合には、直接本人が請求しなければならない。

 この他、民法上の話ではないが、税法上これまで20歳以上(あるいは以下)として定められていたものが18歳となる例がある。特例贈与の税率、相続時精算課税の取り扱いなど、多岐にわたっているため注意が必要である。これらについては、他のトピックなどを参照していただきたい。

 全くの余談であるが、成年年齢が引き下げられても、飲酒・喫煙が可能となるのは20歳以上である。また、少年が犯罪を犯した場合に適用される少年法も引き続き20歳未満の者に適用される。

 FPとしての業務を遂行する場合、これらの改正が様々な影響を与えてくることになるため、法令の改正について必要な情報を集め、正しいアドバイスを行うことが必要となる。
参考:
(セールス手帖社 田中一司)

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