乗合代理店の評価制度の新設へ

加藤 悠
2021.11.22

 生命保険業界の健全化のために、「乗合代理店」を評価する制度が新設される方向で動いている。何を評価する制度で、なぜ新設されることとなったのか。
背景
 乗合代理店とは、「保険ショップ」に代表される、複数の保険商品を取り扱う代理店をいい、「顧客に対し、自身の取り扱う商品の中から特定の商品を販売する際に、その推奨理由を説明すること」が必要とされている。これは改正保険業法(2018年に完全施行)で導入された「比較推奨販売」に関する規制だが、金融庁は「顧客本位の業務運営」の観点から、「高い手数料を受け取れる商品を優先的に推奨し、比較推奨販売が歪められていないか」という懸念を示していた。

 また、保険会社も「顧客本位の業務運営」の観点から、「営業を推進するために過度なインセンティブ報酬を支払うことを避ける」ために、手数料を決定するための評価基準は、「量(契約件数)」だけではなく「質(業務品質)」も見るようにシフトしている。しかし、
形式的な基準をクリアするだけで評価される
検査の際に、業務の適切性を検証できないのに、業務品質が高いと評価されるケースがある
各保険会社が各々の評価項目を導入するため、乗合代理店は取扱保険会社が多いほど対応事項が多くなり、困惑する
状況であった。

 そこで、「乗合代理店の業務品質のあり方」の検討が必要となり、2020年6月、生命保険協会に「代理店業務品質のあり方等に関するスタディーグループ(以下、SG)」を設置、議論されるに至った。
制度の方向性や課題など
 SGでは、「保険加入を判断するにあたり、顧客が乗合代理店に対して期待するもの」として、「顧客対応」「ガバナンス」「個人情報保護」「アフターフォロー」を業務品質の4要素と定義、4要素を持続的に実践できている=「業務品質が高い」、と整理。その後、議論やトライアルの実施などを経て、制度の素案をSG第16回(2021年9月実施)で公表した。その概要は以下のとおり。
上記4要素にもとづき200を超える評価項目を設定
評価は生命保険協会が行い、年間で150~200店を評価する想定
結果は対象代理店にフィードバックされ、生命保険協会ホームページでも公表予定
この制度により、
乗合代理店は、生命保険協会ホームページの掲載という「第三者からのお墨付き」が得られるため、自主的に品質向上に取り組む
顧客は、業務品質が高く安心して相談できる乗合代理店を、公表内容をもとにして選べるようになる
ことが期待される。

 一方、素案を見た限りでは、
2020年12月時点の全国の乗合代理店数は約2.2万店。ゆえに、開始直後はごく一部の公表に留まる
公表対象は「一定の評価基準を満たした場合」のみとし、「基準を満たさなかった場合は非公表(調査を受けたことも非公表)」とされているため、非公表の乗合代理店は「評価が低かった」のか「そもそも評価を受けていない」のか判断できない
といった懸念事項も浮かぶ。

 しかし、上述のとおり、この制度は乗合代理店全体の業務品質の底上げにつながり、顧客にとって安心して相談できる先の「見える化」が期待できる。正式決定・運用開始に至るまで、引き続き注目していきたい。
参照:
(セールス手帖社 加藤 悠)

▲ PAGE TOP