令和4年以降の短期退職手当等の取扱いについて

堀 雅哉
2021.11.25

 「短期退職手当等」とは、短期勤続年数(役員等以外の者として勤務した期間が5年以下であるもの)に対応する退職手当等として支払を受けるもので、「特定役員退職手当等(役員等勤続年数が5年以下の場合で、その役員等勤続年数に対応する退職手当等)」に該当しないものをいう。この短期退職所得等の退職所得課税取扱いが来年(令和4年)1月1日に施行される(令和3年度税制改正)。

 国税庁から公表された「短期退職手当等Q&A」により、具体的な取扱いを確認したい。
短期退職手当等には2分の1課税の対象外となる範囲が設定される
 特定役員退職手当等の場合、その全額について「退職所得の2分の1課税の対象外」とする改正がすでに平成25年に施行されているが、短期退職手当等については、「退職金の額から退職所得控除額を差し引いたうち300万円を超える部分」が「退職所得の2分の1課税の対象外」として取り扱われる。短期退職手当等に係る退職所得金額は以下のように区分される。
当該短期退職手当等の収入金額から退職所得控除額を控除した残額が300万円以下の場合
→ 当該残額の2分の1に相当する金額
当該短期退職手当等の収入金額から退職所得控除額を控除した残額が300万円超の場合
→ (300万円×1/2)※1 +{収入金額-(300万円+退職所得控除額)}※2
※1
300万円以下の部分の退職所得金額
※2
300万円を超える部分の退職所得金額
「収入すべきことが確定した日」が令和4年1月1日以降であるものが対象
 短期退職手当等の取扱いが適用されるのは、原則として、退職手当等の支給の基因となった退職の日が令和4年1月1日以降であるものとなる。つまり、令和3年12月31日以前に退職した使用人に対して支払われる退職手当等であれば、その支払日が令和4年1月1日以降であっても原則として改正前の規定が適用される(全額が2分の1課税の対象)。

 また、短期勤続年数とは、「役員等以外の者として勤務した期間により計算した勤続年数が5年以下であるもの」を言うが、勤続期間のうちに役員等勤続期間がある場合、役員等以外の者として勤務した期間の判定では、役員等勤続期間を含んだ年数で行われる。たとえば、入社から退職までの勤続期間が6年、そのうち最初の4年が役員等以外(使用人)の期間、残り2年が役員等の期間である場合、役員等以外の者としての期間は、役員等勤続期間の2年を含んだ計6年として判定され、この場合の役員等以外の者として勤務した期間に対応する退職手当等は短期退職手当等に該当せず、一般退職手当等となる(なお、役員等勤続期間2年に対応する退職手当等は、特定退職手当等に該当)。
複数の種類の退職手当等の支給を受けた場合の退職所得金額の計算
 令和4年からは、退職手当等が「特定役員退職手当等」「短期退職手当等」「一般退職手当等」の3種類となるために、退職所得金額の計算方法も複数混在する。そのため退職所得課税は同年中に受けた退職手当等に係る退職所得の合計額に課税されるため、複数種類の退職手当等を受けた場合の退職所得控除額は、重複する勤続期間による調整を行ってそれぞれに退職手当等に配分されることになる。

 たとえば、入社から退職までの勤続期間が5年、そのうち最初の2年が役員等以外(使用人)、残り3年が役員等の期間である場合、役員等以外の者としての期間は、役員等勤続期間である2年を含んだ5年なので、役員等以外(使用人)の期間に対応する対象手当等は短期退職手当等に該当し、役員等勤続期間に対応するものは特定役員退職手当等に該当する。

 この例で短期退職手当等の支給額を500万円、特定役員退職手当等は1,000万円とした場合、退職所得控除額の合計は、勤続期間5年分に対応する200万円(40万円×5年)となるが、特定役員退職手当等に適用分が120万円(=40万円×3年)、短期退職手当等に適用分が、80万円(=200万円-120万円)となる。よって、特定役員退職手当等の退職所得金額は880万円(=1,000万円-120万円)、短期退職手当等については、収入金額から退職所得控除額を控除した残額が420万円(=500万円-80万円)と300万円超となり、短期退職手当等に係る退職所得金額は、270万円(計算は前述の「② 当該短期退職手当等の収入金額から退職所得控除額を控除した残額が300万円超の場合」を参照)、退職所得金額の合計は1,150万円となって、これに税率が乗じられて税額が算出される。

 その他のパターンについても、「短期退職手当等Q&A」にて確認が可能である。
参考:
(セールス手帖社 堀 雅哉)

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