金融商品サービス仲介業がスタート!

高橋 浩史
2021.12.02

 2020年6月の「金融サービスの利用者の利便の向上及び保護を図るための金融商品の販売等に関する法律等の一部を改正する法律」の公布を受け、2021年11月より「金融サービス仲介業」という制度(新仲介)が始まりました。創設の背景や制度の概要を見てみます。
1つの登録で銀行・証券・保険の仲介が可能に
 「金融サービス仲介業」は、銀行・証券・保険に分かれている仲介業の登録を一本化するもので、「新仲介」とも呼ばれています。

 これまで、住宅ローン・投資信託・生命保険などを販売するには、それぞれ「銀行代理業」「金融商品仲介業」「保険募集人」の登録や許可が必要でしたが、これからは1つの登録で前記3分野の仲介が可能になります。

 新たな制度が設けられた背景には、従来の制度では業態ごとの縦割り状態だったものを一本化し、複数の業態にまたがって提供していた商品やサービスをワンストップで提供できるようにすることがあります。合わせて、顧客が業態の違う金融商品について、分野を横断して比較・検討できるようにすることが挙げられています。
取り扱いできる商品には制約も
 仲介業者にとっては、銀行・証券・保険への参入の障壁がなくなったように思える今回の新仲介ですが、それぞれの分野ですべての商品を取り扱えるわけではなさそうです。金融庁の資料によると、以下のような記述があります。
新たな仲介業者には、商品設計が複雑でないものや、日常生活に定着しているものなど、仲介にあたって高度な商品説明を要しないと考えられる商品・サービスに限って取扱いを認めることが適当である。
 一定のリスクが伴う商品については、専門性に裏付けされた説明が必要だとの考えがあるものと思われます。それぞれの分野で取り扱うことのできる、高度な説明を要する商品やサービスについては、下表のような範囲としています。
銀行 証券 保険
取扱可能(例) 普通/定期預金、住宅ローン 公社債、上場株、投資信託 定期保険、傷害保険、旅行保険、ペット保険
取扱不可(例) 仕組預金等、カードローン 仕組債、非上場株、複雑な投資信託、デリバティブ取引 投資性の強い保険(変額保険、外貨建保険等)、火災保険、終身保険
 さらに保険に関しては、取扱商品の制限に加えて契約金額にも上限があり、生命保険1,000万円、損害保険2,000万円、第3分野保険600万円までとされています。

 今後、金融サービス仲介業の枠内で提供されるサービスとしては、以下のようなものなどが想定されるでしょう。
資産運用の相談で、保険ショップで変額保険と投資信託を比較する
不動産会社が、住宅販売と合わせて住宅ローンや保険の見直しを提案する
スマホアプリで把握した利用者の資産状況から住宅ローンや投資信託の提案をする
 新仲介によって金融業界以外の業界から新たな金融サービスの展開が予想される中、本質的な部分で求められるのは「顧客本位」のサービスではないでしょうか。今後の動向には注目です。
参考:
高橋 浩史(たかはし・ひろし)
FPライフレックス 代表
日本ファイナンシャルプランナーズ協会CFP®
1級ファイナンシャル・プランニング技能士

東京都出身。デザイン会社などでグラフィックデザイナーとして20年活動。 その後、出版社で編集者として在職中にファイナンシャル・プランナー資格を取得。2011年独立系FP事務所FPライフレックス開業。 住宅や保険など一生涯で高額な買い物時に、お金で失敗しないための資金計画や保障選びのコンサルタントとして活動中。 その他、金融機関や出版社でのセミナー講師、書籍や雑誌での執筆業務も行う。
ホームページ http://www.fpliflex.com
ブログ http://ameblo.jp/kuntafp/

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