2021年9月末時点「国の借金」、3ヶ月間で5兆円以上減

浅野 宗玄
2021.12.06

短期国債は減少したものの、他は厳しい状況
 財務省が公表した「国債及び借入金等の現在高」によると、令和3年9月末時点での国債や借入金などを合計したいわゆる「国の借金」は、1,215兆1,532億円となり、過去最大だった令和3年6月末から5兆4,836億円減った。これまで続いていた過去最大を毎回更新する上昇傾向を脱した。

 9月末の国の借金の内訳は、令和3年6月末に比べて国債は約8.6兆円減の約1,058.2兆円で全体の約87%を占めている。普通国債(建設国債、赤字国債等)は、約2.2兆円減の約939.8兆円で、長期国債(10年以上)が約9.3兆円増加して過去最大の約732.6兆円、中期国債(2年から5年)も約1.9兆円増の約166.8兆円と増加したが、短期国債(1年以下)が約13.4兆円減の約40.5兆円となって全体を押し下げた。

 しかし、新型コロナ感染の拡大を受けて編成された令和3年度予算では、追加歳出や歳入不足の財源を全て国債の発行に頼っており、さらに今後の経済対策への財政出動が予想され、国の財政は厳しい状況が続きそうだ。
国民1人当たりの借金額は約972万円
 この「国の借金」1,215兆1,532億円を、わが国の今年11月1日時点での推計人口1億2,507万人(総務省統計局の概算値)で割ると、国民1人当たりの借金は、約972万円にのぼる。

 「国の借金」の中でも、公債残高(普通国債残高)は年々増加の一途を辿っているが、令和3年9月末実績の公債残高約939.8兆円である。当初予算ベースでは、年度末までにさらに約50兆円増加して、約990.3兆円の残高が見込まれている。令和3年度一般会計税収予算額の17年分以上に相当し、国民1人当たり約790万円、4人家族で約3,160万円にのぼり、将来世代に大きな負担を残すことになる。ちなみに、国及び地方の長期債務残高は令和3年度末で約1,212兆円にのぼる見込み。

 長期債務残高は令和3年度一般会計予算の歳出総額106兆6,097億円の約11倍、同年度税収見込み額57兆4,480億円の約21倍である。年収500万円のサラリーマンが1億円以上の借金を抱えている勘定だ。
参考資料:
浅野 宗玄(あさの・むねはる)
株式会社タックス・コム代表取締役
税金ジャーナリスト

1948年生まれ。税務・経営関連専門誌の編集を経て、2000年に株式会社タックス・コムを設立。同社代表、ジャーナリストとしても週刊誌等に執筆。著書に『住基ネットとプライバシー問題』(中央経済社)など。
http://www.taxcom.co.jp/
○タックス・コム企画・編集の新刊書籍『生命保険法人契約を考える』
http://www.taxcom.co.jp/seimeihoujin/index.php

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