上場株式等の配当所得の申告不要制度

木下 洋子
2022.01.27

上場株式等の配当等は所得税と住民税で課税方式を選択できる
 上場株式等の配当等(一定の大口株主等が受けるものを除く。以下同じ。)については、所得税および住民税において特定口座で「源泉徴収あり」を選択している場合などは、所得税、住民税が配当から源泉徴収され、確定申告する必要はない。しかし、確定申告することを選び、配当控除または上場株式等の譲渡損失との損益通算を受けるなど、課税上有利となる選択をすることも可能である。

 さらに、上場株式等の配当所得等においては所得税と住民税で異なる課税方式を選択することも認められている。例えば、所得税においては総合課税を選択し配当控除により税額の軽減を受け、一方、住民税においては申告不要を選択するというように、所得税と住民税それぞれの総合課税の税率と源泉徴収税率との差を利用して、課税上有利な方法を選ぶことができる。

 また、住民税について申告不要を選択すれば、国民健康保険や後期高齢者医療制度の保険料の算定基礎である住民税の所得割が配当分だけ減り、保険料負担が減少するというメリットもある。

 住民税で所得税と異なる課税方式を選択する場合は、住民税の納税通知書が送達されるときまでに、所得税と異なる課税方式を選択するための申告を行う必要がある。この申告がされない場合は、住民税も所得税と同じ課税方法が適用されてしまうので、注意が必要である。
令和3年分より課税方式選択が簡便に!
 住民税の申告を所得税と別途に行う場合、所得税と住民税で所得控除の違いや、eLTAXでなく書面による提出が必要になるなど、申告手続きが煩雑であった。

 この点において、令和3年分からは、所得税確定申告書にて個人住民税で「申告不要」を選択する旨の意思表示を行った場合は、特別徴収された上場株式等の配当所得および譲渡所得については、所得税の確定申告のみで申告手続きが完結できることとなった。原則として、市町村に住民税の申告書の提出は不要となる。

 ただし、上場株式等の配当所得と譲渡所得の両方の所得がある場合は、その両方の所得とも「申告不要」とする場合に限られる。住民税において配当所得、株式等に係る譲渡所得の一部でも申告するものがある場合はこの方法を適用できないなど制限があるので、注意されたい。
令和6年度から、所得税と個人住民税で課税方式を選べる制度が廃止に
 令和4年度税制改正において、令和6年度分以降の住民税は所得税と課税方式を一致させることとなった。今まで課税方式を選択することにより税額や保険料の軽減の恩恵を受けていた場合には、令和6年度以降は、納税額または健康保険料等の負担額が増えることが予想される。
木下 洋子(きのした・ひろこ)
マネーコンシェルジュ税理士法人

群馬県出身。大学卒業後、会計事務所勤務を経て現法人へ。法人成り支援や節税対策・赤字対策など、中小企業経営者の参謀役を目指し、活動中。年に数回の小冊子発行など、事務所全体で執筆活動にも力を入れている。趣味はピアノを弾くこと。

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