転勤を伴う異動、一般社員の3割が「NO!」

庄司 英尚
2022.01.31

1割は転勤を拒否できないなら退職・転職を検討
 株式会社パーソル総合研究所は、一般社員層(非管理職)の異動配置に関する調査結果を発表した。この調査は、非管理職の異動配置に関する様々な実態を定量的なデータで把握し、経営・人事に資する提言を同社が行うことを目的に実施したものだ。

 調査結果によると、会社の指示による転勤を伴う異動について拒否する意向の人は30.6%もあった。その内訳は、希望条件に合わなければ拒否するが19.1%で、拒否できないのであれば退職や転職を検討するが11.5%であった。辞令1つで全国どこでも黙って転勤するのが昭和のサラリーマンだったが、令和になると、転勤に対して3割は「NO!」を示し、1割は転勤するくらいなら退職や転職まで考える時代になったのだ。

 若年層の転勤を伴う人事異動については極力少なくしていく方針を示す大手企業も増えてきており、さらにテレワークによって就業環境が整備されていくなかで人事異動についてはもっと掘り下げてその必要性について考えていくべきである。
明確な方針がなく人事異動を行っている会社も
 経営層・人事に尋ねた結果では、人事管理の各種取り組みのうち、一般社員(非管理職)の戦略的異動配置が重要と回答したのは70.1%だった(「非常に重要である」と「重要である」の合計)。一方で非管理職の異動配置について「明確な方針がある」と回答した企業は35.0%にとどまっている。異動配置は重要と考えてはいても、実際の取り組みとの間にはギャップがあるようだ。

 一般的に人事異動とは、組織の中で社員の配置・地位や勤務状態を変えることをいう。人事異動には、採用、退職、配置転換(配置換え)、転勤、昇進、昇格、降格、出向などの種類がある。会社は人材育成及び組織の活性化等などそれぞれ目的をもって人事異動を行っており、従業員側も人事異動はある一定のサイクルで行われるものという認識はあるはずである。

 しかしながら従業員側の価値観も最近は変わってきている。今回の調査結果に見られるように、一般社員層(非管理職)が人事異動について会社の方針や異動そのものに納得することができず、優秀な人材がそのまま退職してしまうケースも起こりがちだ。それは大きな損失であると同時に会社側も人事異動方針や人事異動の戦略なども必要に応じて変えていかなければ経営問題にもつながってくるレベルだ。
個人希望の異動のほうがマッチング度が高い
 調査結果によると、会社主導の異動よりも個人希望の異動のほうがマッチング度が高く、異動後の活躍状況も相対的に見て高いと同調査では分析しており、キャリア自律の重要性が高まっている中、これからは公募制などの手挙げ制の異動配置の仕組みを増やしていくことが必要だろうとまとめている。

 また、社員が希望する人事異動が実現できない場合も想定し、そのような際の学習支援、キャリア支援、部門横断の交流機会の提供などに力を入れることの重要性も説いている。「部門横断的なプロジェクトへの参加」などで社内知識を形成することも可能であると思われるのでそのような制度を導入している会社の実際の事例などをヒアリングし、徐々に導入してみるのも社員だけでなく会社にとってもいい効果を生むのではないだろうか。
参照:
庄司 英尚(しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、アイウェーブ社労士事務所 代表
社会保険労務士 人事コンサルタント

福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所(現・アイウェーブ社労士事務所)を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続き及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。

公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/

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