財産管理の信託について知っておきたいこと

森田 和子
2022.03.10

 高齢になると、自分ではお金の管理が難しくなる場合があります。それでも、生活していく上では、さまざまな支払いや預貯金の管理が必要です。電子決済や複雑な金融商品なども理解しないままに使えばトラブルにつながりかねません。財産管理に不安を覚えるようになった時には、外部のサポートを受けたいと考える方もいるのではないでしょうか。信託銀行だけでなく、銀行でも財産管理のサービスを提供するところがあります。確認していきましょう。
判断力が低下した場合には代理人が手続きできる
 定期預金を解約したり、まとまったお金を振り込んだりすることは、基本的に本人が行わなければなりません。今は問題なくできていても、将来、お金の管理が難しくなった場合には他の人に頼みたいと考えている方もいることでしょう。そのような場合に使えるものには任意後見制度や家族信託もありますが、利用するには手続きや費用の面でハードルが高いという意見もあります。それよりも気軽に利用できるものとして関心が寄せられているのが財産管理の信託です。

 信託は、自分の財産を信頼できる人に託して、管理や運用などをしてもらう制度です。信託銀行だけでなく、信託兼営認可を受けた銀行などでも取り扱われています。

 財産管理の信託では、手続代理人を指定します。元気な時は、財産の引き出しなどは手続代理人の同意を得ながら本人が行います。体力や判断能力が低下したときは、手続代理人が財産の引き出しなどを行います。手続代理人の他に見守る人を選べるものもあるので、手続代理人が財産を勝手に使ってしまうのを防ぐ効果があります。

 とはいえ、銀行の財産管理の信託は主に金銭に限られます。信託銀行であれば不動産なども対象になるので、財産の状況によって金融機関を選ぶ必要があります。
必ず費用の確認を
 財産管理の信託に限らず、金融商品を選ぶ時、契約する時には費用の確認が必要です。契約する時にはいくらかかるのか、契約後にかかる費用はあるのかなど、費用は必ず確認しましょう。財産管理の信託でも、契約時には契約手数料が、その後は毎月管理報酬がかかるのが一般的です。例えば、ある財産管理の信託では、契約手数料が信託財産額の2.2%とされているため、信託財産が1,000万円であれば22万円です。契約後は管理報酬として毎月3,300円かかります。複数の金融機関で見積もり、必ず費用を確認しましょう。
家族信託にスマホのアプリを取り入れるサービスも始まっている
 財産管理を代理で行ってもらう方法は信託に限られません。あらかじめ代理人を決め、公証役場で財産管理等の委任契約書などを作成しておく方法もあります。親族であれば無報酬で引き受けてもらえる場合もあります。しかし、判断能力が低下した時に備えるには別の契約も必要になるため、司法書士や弁護士などの専門家に相談すると安心でしょう。また、スマホのアプリなどを利用することにより、従来よりも少ない費用で家族信託を利用できるサービスなども登場しています。選択肢が多いと選ぶのが難しくなりますが、「内容を理解できるものに、費用を支払える範囲で利用する」という原則を押さえて選ぶことをおすすめします。
森田 和子(もりた・かずこ)
FPオフィス・モリタ 代表
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®認定者、DCA(確定拠出年金アドバイザー)

大学卒業後、コンピュータソフト会社、生命保険会社勤務を経て、1999年独立。保険や投資信託の販売をしない独立系のファイナンシャル・プランナー事務所としてコンサルティングを行っている。
お金の管理は「楽に、楽しく」、相談される方を「追い詰めない」のがモットー。情報サイト・新聞・雑誌への執筆多数。企業・学校・イベントで行うマネープランセミナー・講演も好評。

FPオフィス・モリタ http://okane-net.com/

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