男女差の解消へ~遺族年金~
2025.07.17
以前、「男女差がある年金~遺族年金~(No.4740)」において、「遺族年金は公的年金の中でも、『夫が外で働き、妻が家を守る』という、かつての日本の家族制度が色濃く残っている」と書かせていただきました。
そのような現状を踏まえ、2025(令和7)年6月13日に年金制度改正法が可決・成立しました。今回の改正趣旨は、「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化を図る観点から、働き方や男女の差等に中立的で、ライフスタイルや家族構成等の多様化を踏まえた年金制度を構築するとともに、所得再分配機能の強化や私的年金制度の拡充等により高齢期における生活の安定を図るため(厚生労働省:改正法の意義より)」です。改正のうち、遺族年金についてお伝えします。
そのような現状を踏まえ、2025(令和7)年6月13日に年金制度改正法が可決・成立しました。今回の改正趣旨は、「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化を図る観点から、働き方や男女の差等に中立的で、ライフスタイルや家族構成等の多様化を踏まえた年金制度を構築するとともに、所得再分配機能の強化や私的年金制度の拡充等により高齢期における生活の安定を図るため(厚生労働省:改正法の意義より)」です。改正のうち、遺族年金についてお伝えします。
子がいるケース:遺族基礎年金
2014(平成26)年4月に年金機能強化法が施行され、遺族基礎年金の受給対象者は「子のある妻」から「子のある配偶者」に変わりました。「配偶者」となったことで、要件を満たした「子のある夫」にも遺族基礎年金が支給されるようになり、男女差が解消されました。
今回の改正において、遺族基礎年金の「18歳に到達する年度の末日になるまで(障害の状態にある場合は20歳未満まで)の子がいること」という受給要件に変更はありません。ただし、子の加算額が現在より引上げられます。現在は、第1子・第2子が23万4,800円、第3子以降が7万8,300円(2024年度価格)ですが、これが子1人につき28万1,700円になり、3人目以降についても同額の支給となります(いずれも年額)。
さらに、子に対する遺族基礎年金の支給要件も緩和され、子の意思によらない事情で支給が停止されることがなくなります。例えば、残された配偶者が再婚した場合、現行制度では同居している子も支給が停止されていましたが、その規定は廃止され、子は遺族基礎年金を受給できるようになります。また、収入要件も撤廃されるため、年収が850万円を超えていても受給できます。
今回の改正において、遺族基礎年金の「18歳に到達する年度の末日になるまで(障害の状態にある場合は20歳未満まで)の子がいること」という受給要件に変更はありません。ただし、子の加算額が現在より引上げられます。現在は、第1子・第2子が23万4,800円、第3子以降が7万8,300円(2024年度価格)ですが、これが子1人につき28万1,700円になり、3人目以降についても同額の支給となります(いずれも年額)。
さらに、子に対する遺族基礎年金の支給要件も緩和され、子の意思によらない事情で支給が停止されることがなくなります。例えば、残された配偶者が再婚した場合、現行制度では同居している子も支給が停止されていましたが、その規定は廃止され、子は遺族基礎年金を受給できるようになります。また、収入要件も撤廃されるため、年収が850万円を超えていても受給できます。
遺族厚生年金
現在、配偶者が遺族厚生年金を受け取る場合、原則として、妻には年齢要件がありませんが(夫の死亡時に30歳未満で子のない妻は5年の有期年金)、夫については子の有無にかかわらず、妻の死亡時に55歳以上であることが条件であり(子がいない場合、受給開始は60歳から)、男女差があります。しかし、女性の就業率の向上などを踏まえて遺族厚生年金における支給要件や給付内容を改正し、男女差が解消されます。
具体的には、子がいない60歳未満の人が配偶者を亡くした場合、男女とも原則5年間の有期給付となります(配慮措置等が必要な場合は5年目以降も給付は継続されます)。60歳以上の人が配偶者を亡くした場合は、現行どおり無期給付されます。
子がいる場合、子が18歳に到達する年度の末日までの期間については現行制度と同様で、その後の期間は、上記の子のいない配偶者のケースと同様に、原則5年の遺族厚生年金となります。
原則5年の遺族厚生年金については、従来の「老齢厚生年金の4分の3」の給付に加え、「老齢厚生年金の4分の1相当」が加算された給付となり、経済状況等により配慮が必要な場合などには前述のとおり、その後も給付が継続されます。
なお、以下に該当する方は現行制度から変更はありません。
・60歳以上で死別された人
・改正前から遺族厚生年金を受け取っていた人
・2028(令和10)年度に40歳以上になる女性
また、女性のみの加算(中高齢寡婦加算)は見直されます。年金制度改正法の施行日(2028(令和10)年4月1日)以降に新規に発生する加算の額は、2053(令和35)年度まで25年かけて段階的に減額され、最終的には廃止となります。
具体的には、子がいない60歳未満の人が配偶者を亡くした場合、男女とも原則5年間の有期給付となります(配慮措置等が必要な場合は5年目以降も給付は継続されます)。60歳以上の人が配偶者を亡くした場合は、現行どおり無期給付されます。
子がいる場合、子が18歳に到達する年度の末日までの期間については現行制度と同様で、その後の期間は、上記の子のいない配偶者のケースと同様に、原則5年の遺族厚生年金となります。
原則5年の遺族厚生年金については、従来の「老齢厚生年金の4分の3」の給付に加え、「老齢厚生年金の4分の1相当」が加算された給付となり、経済状況等により配慮が必要な場合などには前述のとおり、その後も給付が継続されます。
なお、以下に該当する方は現行制度から変更はありません。
・60歳以上で死別された人
・改正前から遺族厚生年金を受け取っていた人
・2028(令和10)年度に40歳以上になる女性
また、女性のみの加算(中高齢寡婦加算)は見直されます。年金制度改正法の施行日(2028(令和10)年4月1日)以降に新規に発生する加算の額は、2053(令和35)年度まで25年かけて段階的に減額され、最終的には廃止となります。
まとめ
遺族年金の見直しは2028(令和10)年4月1日施行予定です。今回の法改正は男女差の解消だけでなく、収入要件や子どもの受給等も見直されているので、注目していただけたらと思います。

三角 桂子(みすみ・けいこ)
社会保険労務士法人エニシアFP 代表社員
FP・社会保険労務士
大学卒業後、公務員、専業主婦、自営業、会社員、シングルとあらゆる立場を経験し、FPと社会保険労務士として開業し、5年目に法人化(共同代表)。
FPと社会保険労務士の二刀流を強みに、法人・個人の労務、年金の相談業務やセミナー、執筆など、幅広く行っている。
常に自身の経験を活かし、丁寧な対応を心がけ、生涯現役に向かって邁進中。
法人名はご縁(えにし)に感謝(ありがとう)が由来。
公式サイト https://sr-enishiafp.com/
FP・社会保険労務士
大学卒業後、公務員、専業主婦、自営業、会社員、シングルとあらゆる立場を経験し、FPと社会保険労務士として開業し、5年目に法人化(共同代表)。
FPと社会保険労務士の二刀流を強みに、法人・個人の労務、年金の相談業務やセミナー、執筆など、幅広く行っている。
常に自身の経験を活かし、丁寧な対応を心がけ、生涯現役に向かって邁進中。
法人名はご縁(えにし)に感謝(ありがとう)が由来。
公式サイト https://sr-enishiafp.com/