企業の賃金改善見込み、2年振りに半数上回る

庄司 英尚
2022.03.28

ベースアップ、過去最高に
 株式会社帝国データバンクは、賃金動向に関する企業の意識について毎年調査を実施しており、2月10日に2022年度の調査結果を発表した。2022年度の企業の賃金動向について尋ねたところ、正社員の賃金改善(ベースアップや賞与、一時金の引上げ)が「ある」と見込む企業は54.6%となり、2年ぶりに5割を上回った。一方、「ない」と回答した企業は19.5%と前回調査(28.0%)から8.5ポイント低下した。

 賃金改善の具体的な内容をみると、「ベースアップ」が46.4%(前年比10.5ポイント増)、「賞与(一時金)」が27.7%(同7.4ポイント増)とどちらも増加。「ベースアップ」については過去最高の2019年度(45.6%)を上回り、調査開始以来の最高水準である。
改善理由は労働力定着・確保に必要
 賃金改善見込みの割合を業界別にみると、「製造」(59.7%)が最も高く、「建設」(57.2%)、「サービス」(54.0%)が続いている。企業側の声としては、「賃金の上昇により、消費の増加に期待」や「事業環境的には厳しいものがあるが、社員の定着のためには賃上げは必要と考えている」というものがあった。また新型コロナの影響を受けている業界からも、「仕事が減少し売り上げも悪いが、一旦雇用をカットすると再雇用は難しい。今頑張っている人をギリギリまで大切にしたいため、賃金アップは仕方なく、世の中の物価上昇にもあわせるべきと考える」という声もあがっていた。

 実際に賃金改善が「ある」と回答した企業に、その理由(複数回答)を尋ねたところ、人手不足などによる「労働力の定着・確保」がトップで76.6%、次いで「自社の業績拡大」(38.0%)、「物価動向」(21.8%)と続いている。特に「物価動向」については、2021年度の7.7%から大幅に増加している点に注目したい。
総人件費は2021年度から一転し大幅増
 2022年度の自社の総人件費が2021年度と比較してどの程度変動すると見込むかについて尋ねたところ、「増加」を見込んでいる企業は67.1%。前年比12.9ポイント増と大幅に増加している。一方、「減少」を見込んでいる企業は8.7%(前年比7.0ポイント減)であったことから、総人件費の増加率は昨年より平均2.68%の増加と見込まれる。

 今後の賃金改善を促進するためには、より企業の生産性を高めるための施策(DX投資、従業員へのリカレント教育など)へ注力する必要があると調査をまとめており、企業側もよく考えて対応していくべきであるといえるだろう。
参照:
庄司 英尚(しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、アイウェーブ社労士事務所 代表
社会保険労務士 人事コンサルタント

福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所(現・アイウェーブ社労士事務所)を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続き及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。

公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/

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