成人年齢18歳引下げに対する金融業界の動向

高橋 浩史
2022.04.14

 民法の改正により、2022年4月から成人年齢が18歳に引き下げられました。

 これにより、親の同意がなくても、10代からローン契約やクレジットカード作成が可能になります。業界団体などでは、成人年齢引下げに対応するためのガイドライン作成や注意喚起を行っています。
18・19歳のカードローン契約は見送りへ
 成人年齢の引き下げで懸念されるのが、軽い気持ちでローン契約をしたものの、返済不能になり自己破産することです。民法の改正後は、たとえ18歳で親の承諾なしで契約したとしても、取り消すことはできません。

 こういった背景を踏まえて、10代の若者が過度の債務を負わないよう「日本貸金業協会」では、次のような規制を自主ガイドラインに盛り込むこととしました。
若年者への貸付けの契約を締結しようとする場合は、貸付額にかかわらず、収入の状況を示す書類の提出又は提供を受けてこれを確認するものとする。また、当該書類は、当該貸付けに係る契約に定められた最終の返済期日まで保存するなど、貸金業法施行規則第10条の18第2項の規定に沿って保存するものとする。
若年者への貸付けの契約を締結しようとする場合は、資金使途を確認するとともに、名義の貸借やマルチ商法等について注意喚起を行い、不自然な点が見受けられる場合には聴き取りを行う等、より慎重な調査を行うものとする。
成年年齢が引き下げられた旨の表現内容を用いる等、ことさら若年者を対象にした広告・勧誘を行わないものとする。
*日本貸金業協会ホームページより一部抜粋
 また、一般社団法人全国銀行協会では、銀行カードローンなどの提供には、十分な配慮が必要であるとの認識から、「成年年齢引下げを踏まえた銀行による消費者向け貸付けに係る申し合わせ」を作成。大手銀行などでは、4月以降も若者の過大債務防止の観点から、カードローンの契約対象を20歳以上に据え置くという報道もありました。
注意喚起だけではなくリテラシー教育も大切に
 インターネットやSNSなどの普及により、近年ではさまざまな消費者トラブルも起きています。これについて、独立行政法人国民生活センターでは、全国の消費生活センターに集まる相談事例などから注意喚起を呼びかけています。

 特に18歳や19歳に気を付けてほしい消費者トラブルとして、「副業・情報商材やマルチなどの“もうけ話”」「消費者金融からの借り入れやクレジットカードなどの“借金・クレカ”」「スマホやネット回線などの“通信契約”」など、最新のトラブル10選を公表しました。

 今回の民法改正では、18歳から自分の意思でさまざまな契約ができるようになります。金融広報中央委員会が学生向けに刊行している『金融教育プログラム』には、「消費生活・金融トラブル防止」に関する分野も盛り込まれています。成人年齢の引き下げで、早い段階から契約や債務などの金融リテラシー教育の一層の充実が必要になります。

 ネガティブな面に注意がいきがちですが、正しい知識を身につけた上で金融サービスを見極めて利用し、生活を豊かにする術を伝えていくことも大切なことではないでしょうか。
参考:
高橋 浩史(たかはし・ひろし)
FPライフレックス 代表
日本ファイナンシャルプランナーズ協会CFP®
1級ファイナンシャル・プランニング技能士

東京都出身。デザイン会社などでグラフィックデザイナーとして20年活動。 その後、出版社で編集者として在職中にファイナンシャル・プランナー資格を取得。2011年独立系FP事務所FPライフレックス開業。 住宅や保険など一生涯で高額な買い物時に、お金で失敗しないための資金計画や保障選びのコンサルタントとして活動中。 その他、金融機関や出版社でのセミナー講師、書籍や雑誌での執筆業務も行う。
ホームページ http://www.fpliflex.com
ブログ http://ameblo.jp/kuntafp/

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