新卒者の4人に1人は「転職志向」を胸に秘めて入社

庄司 英尚
2022.05.16

入社前と入社半年後の意識の変化を調査
 公益社団法人全国求人情報協会(新卒等若年雇用部会)は、2021年に卒業した新卒者を対象に、入社前(2021年3月)と入社後(2021年11月)の延べ2回調査を実施し、約半年間にわたる新卒者の就業意識の実態を公表している。

 近年、若者の早期離職についてはニュースで取り上げられることも多く、企業側もその対応には苦労しているところであり、調査結果を参考にしながら考えていきたい。
入社前転職志向でも入社後に就業意識が変わるケースも
 入社予定の企業・団体等への就業意識を聞いたところ、入社前の時点で25.8%が「転職志向」(「転職することも視野に入れている」「すぐに転職したいと思っている」の合計)と答えている。第一志望の企業に就職できなかったことや不本意な就職活動に終わってしまったことなどからそのような志向になったと推測できる。

 入社後約半年を経て改めて就業意識を聞いたところ、入社前に転職志向であった人のうちの28.0%が「勤続志向」(「今の企業・団体等でずっと仕事を続けたい」「当面は今の企業・団体等で仕事を続けたい」の合計)に転じたことは注目すべき点である。入社前はイメージだけでその企業のことを判断していたのが、実際に働くことによって新卒社員の意識が変わることもあるようだ。企業内の人たちとの交流も含め職場環境の“居心地”が大きく影響しているのではないだろうか。
指導担当の有無による違いは大きい
 入社後の仕事環境についても調査を行っており、指導担当の有無による違いについて尋ねている。指導担当がいる(いた)人では39.5%が適職意識(「自分はこの会社で仕事をするのに向いていそうだと感じた」と回答)を持っていたのに対し、指導担当がいない(いなかった)人では15.8%しか適職意識を持っていなかった。その差は2.5倍もあることから指導担当の有無が新卒者に与える影響は大きいといえる。

 調査から見えてきたこととして、「適職意識」を持てるか否かが、入社後も勤続志向を持ち続けたり、入社後に転職志向から勤続志向に転じたりすることにつながると分析している。

 新卒の採用活動に力を入れるのはいいが、入社後の新卒社員を定着させることも重視して総合的に考えなければ、もともと適職意識を持って入社した者も徐々に意識が変化してしまうのは明らかである。自社のこの3年間の新卒社員の定着率について検証し、指導担当の有無や新卒社員に対するコミュニケーションのとり方などについて冷静に分析してみてはいかがだろうか。
参照:
庄司 英尚(しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、アイウェーブ社労士事務所 代表
社会保険労務士 人事コンサルタント

福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所(現・アイウェーブ社労士事務所)を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続き及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。

公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/

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