厚生労働省がカスタマーハラスメント対策企業マニュアルを作成

沖田 眞紀
2022.05.19

 企業に対する顧客からの苦情やクレームは、商品・サービス・接客態度等に対する不平や不満を訴えるもので、それ自体が問題とは言えません。しかし、近年、長時間の拘束や同じ内容を繰り返すクレーム、名誉棄損・侮辱・ひどい暴言を受けたとする労働者の割合が急増しており、労働者の就業環境を害する要因として、大きな社会問題になっています。

 厚生労働省は、顧客等からの著しい迷惑行為(いわゆるカスタマーハラスメント)の防止対策の一環として、「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を作成しました。雇用する労働者の就業環境が害されないための取組、ハラスメント等防止のための取組を行うことが望ましいと、事業主に求めています。
カスタマーハラスメント(カスハラ)とは
 顧客からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により労働者の就業環境が害されるものをいいます。
カスタマーハラスメント対策の基本的な取組
カスタマーハラスメントを想定した事前の準備
事業主の基本方針・基本姿勢の明確化、従業員への周知・啓発
従業員(被害者)のための相談対応体制の整備
対応方法、手順の策定
社内対応ルールの従業員等への教育・研修
カスタマーハラスメントが実際に起こった際の対応
事実関係の正確な確認と事案への対応
従業員への配慮の措置
再発防止のための取組
①~⑦までの措置と合わせて講ずべき措置(プライバシー保護、不利益取扱いを行わないなど)
カスタマーハラスメントに発展させないために
 初期対応において、まずは誠意ある対応をしつつ事実確認をする、複数名で対応する、専用電話を設け、録音できるようにするなどの措置が必要となります。
カスタマーハラスメント対策に取り組む意義
 企業及び事業主として適切な対応をしていない場合、被害を受けた従業員から責任を追及される可能性があります。厚生労働省のマニュアルで紹介されている事例では、保護者による教諭に対する理不尽な言動があった際に、当該教諭の管理監督者である校長がその場しのぎの対応をとっていたことで、損害賠償責任が追及されました。一方、企業としてカスタマーハラスメント対策を十分に講じていたことで、安全配慮義務の責任を免れた事例もあります。
参照:
沖田 眞紀(おきた・まき)
特定社会保険労務士
社労士事務所コンフィデンス

千葉県出身。大手電機メーカーをはじめ、介護施設、建設関連会社等様々な業種で、人事労務を担当。長年の実務経験を活かし、現在は人事労務相談・助成金手続・就業規則作成などを中心に社会保険業務および各種相談業務を行っている。

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