10月から健康保険・厚生年金保険適用企業の対象が拡大

庄司 英尚
2022.05.23

従業員数が100人を超えている企業は要チェック
 パート・アルバイトなどの短時間労働者も、特定適用事業所で一定の要件を満たして働く場合は健康保険・厚生年金保険の被保険者になれる。法改正により2022年10月から特定適用事業所となる企業の規模要件が、従業員数(常時)が500人超から100人超に改正され、対象が拡大される。

 この場合の100人超とは、法人事業所の場合、同一の法人番号を有する全ての適用事業所に使用される厚生年金保険の被保険者の総数が、12か月のうち6か月以上100人を超えることが見込まれるときに該当すると判断される。企業側は早めに準備しておく必要があるのでポイントを整理したいと思う。
改正後は、パート・アルバイトを3か月雇う場合は該当に
 10月から施行される従業員数100人超の企業で勤務する短時間労働者の健康保険・厚生年金保険の適用要件は、以下のすべてを満たすものになる。
週の所定労働時間が20時間以上30時間未満(週の所定労働時間が40時間の企業の場合)
月額賃金が8万8,000円以上
継続して2か月を超える雇用の見込みがある
学生ではない(休学中や夜間学生は加入対象)
 上記の中で注目したいのは、勤務期間についての「継続して2か月を超える雇用の見込みがある」という要件だ。現在は「継続して1年以上」だが、2022年10月より改正となるので気をつけたい。
新たに加入対象となる短時間労働者には説明を
 企業は、大体の加入対象者を把握したら今後の会社の対応方針を決めていくことになる。加入対象になるかならないかギリギリのところで契約している従業員もいるので、過去の勤務データなどを精査し分析しておくことも大切だ。新たに加入対象となる従業員には、法改正の内容が伝わるように社内イントラやメール、個別の面談も含めて社内周知に努めることが必要だ。加入対象者が多いところでは説明会を開催するのもよいだろう。

 特に健康保険・厚生年金保険に加入後のメリットについて資料を活用し、わかりやすく伝えるとともに保険料についても大体のシミュレーションをして、対象者本人がイメージしやすくする必要がある。これを機会に従業員の中から、キャリアアップしたい、現在の労働時間よりも長く働きたいという要望などが出てくることも考えられる。なお、2022年8月までには日本年金機構から新たな適用対象となることを知らせる通知書類が企業側に届く予定となっている。

 さらに2024年10月からは、企業の規模要件が常時50人超に拡大される。短時間労働者を健康保険・厚生年金保険に加入させなければならない企業がさらに増加することから、対象者が多い企業においては健康保険・厚生年金保険の保険料負担がかなり重くなるので早めに現状を把握して対応していただきたい。
特定適用事業所とは、事業主が同一である一または二以上の適用事業所で、被保険者(短時間労働者を除く)の総数が常時500人を超える事業所のこと。2016年10月の健康保険・厚生年金保険の適用拡大に伴って定義された。
参照:
庄司 英尚(しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、アイウェーブ社労士事務所 代表
社会保険労務士 人事コンサルタント

福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所(現・アイウェーブ社労士事務所)を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続き及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。

公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/

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