知っておきたい国民年金の制度

森田 和子
2022.06.23

 年金は老後の生活を支える大切なものですが、しっかり理解していると自信を持って言える方は少ないのではないでしょうか。年金の制度は大変複雑なので、情報に触れた時には少しずつでも理解していきたいものです。厚生労働省は、自営業者やフリーランスの方などが中心に加入する国民年金の実態調査を行い、結果を公表しています。
「知っていた」が減っている
 この調査では、年金のさまざまな制度について「知っていた」、「知らなかった」で回答する項目があります。調査結果によると、将来公的年金を受けるために知っておきたい重要なことの中には、「知っていた」の回答が、今回の2020年の調査では2017年の前回調査よりも下がっているものがあります。いくつかを以下に抜粋します。
老齢年金を受給するためには、通常、保険料を納めた期間と、免除されていた期間を合わせて10年以上必要となる。(前回53.8%→今回49.0%)
満額の年金を老後に受けるためには、保険料を40年間納付する必要があり、保険料を納めた期間が短ければ、その分、年金の受け取り額が少なくなる。(63.9%→61.2%)
国民年金では、加入期間中の病気やけが等により一定以上の障害の状態になった場合は、障害年金が支給される。(67.1%→66.5%)
国民年金では、老齢年金や障害年金のほか、被保険者本人又は被保険者であった者の死亡時に遺族が年金を受けられる遺族年金の制度がある。(73.5%→72.0%)
学生は、経済的な理由により国民年金保険料の納付が困難な場合には、保険料の納付が猶予される学生納付特例制度がある。(85.6%→83.3%)
 年金額の決まり方や、障害年金、遺族年金についてなど重要な制度についての周知度が下がっていることがわかります。
 また、産前産後期間には、出産前後の一定期間の保険料の全部が免除される制度がありますが、「知っていた」の回答は14.1%と大変低くなっています。2019年4月からスタートした制度のため前回調査の結果はありませんが、知らないために利用しない方がいるのではないかと心配です。
「知っていた」が増えた制度も
 一方で、「知っていた」が増えたものもあります。
所得の額が一定の基準を下回る基礎年金受給者に対して、年金生活者支援給付金が支給される。(19.0%→22.4%)
国民年金保険料の納付は義務であり、滞納した保険料は財産の差押等強制徴収の対象となり得る。(54.2%→55.3%)
 公的年金は老後の生活を支える重要なものです。制度の内容を理解して、使える制度は使っていきましょう。経済的に厳しくなったり、働くことが難しくなったりした時には、保険料の支払いが免除されたり、猶予されたりする制度もあります。公的年金の相談窓口は年金事務所や自治体の窓口です。早めに相談することを心がけてください。
参考:
森田 和子(もりた・かずこ)
FPオフィス・モリタ 代表
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®認定者、DCA(確定拠出年金アドバイザー)

大学卒業後、コンピュータソフト会社、生命保険会社勤務を経て、1999年独立。保険や投資信託の販売をしない独立系のファイナンシャル・プランナー事務所としてコンサルティングを行っている。
お金の管理は「楽に、楽しく」、相談される方を「追い詰めない」のがモットー。情報サイト・新聞・雑誌への執筆多数。企業・学校・イベントで行うマネープランセミナー・講演も好評。

FPオフィス・モリタ http://okane-net.com/

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