法定相続情報証明制度について

堀 雅哉
2022.07.28

 相続発生後、被相続人名義の財産の名義変更手続き等に各種の戸籍書類が必要であり、その取寄せのための時間や費用の発生が見込まれるが、このような各種の戸籍書類取寄せに関わる手間を削減する方法の一つとして、法定相続情報証明制度の活用が考えられる。
「法定相続情報証明制度」の概要とねらい
 「法定相続情報証明制度」とは、相続発生後、相続人が「被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍関係書類等」の取寄せと、「戸籍関係書類等の記載に基づく法定相続情報一覧図」の作成を行い、これらを登記所に提出し申し出を行うと、登記所では登記官が内容の確認を行い「法定相続情報一覧図」を保管、あわせて「認証文付き法定相続情報一覧図の写し」を相続人に交付し(戸籍関係書類等も返却)、以降、相続人は被相続人名義財産の名義変更など戸籍関係書類を要する諸手続きについて「認証文付き法定相続情報一覧図の写し」を代用できるというものである。交付については無料で必要な通数を請求できる。

 被相続人名義の預金口座からの払戻しや、相続等で取得した被相続人名義財産の名義変更手続きなどは、各々の手続きに戸籍関係書類の添付が必要であり、一つの手続きが終了すれば次の別の手続きに添付し、それが終わるとまた・・・という具合に順次対応したため、すべての手続き完了までに相応の日数がかかった、または、複数の手続きを同時に進めるため必要な通数を取寄せて多くの費用がかかった、というよう煩雑な状況を、本制度で交付される認証文付き法定相続情報一覧図(写)を活用することで回避することができる。相続手続きを行う相続人にとってだけでなく、手続きを受け付ける担当部署にとっても負担の軽減が可能な制度と言える。
制度創設の背景 ~相続登記の推進に向けた取組み~
 当制度は2017年(平成29年)5月29日から運用されているので、制度開始からすでに5年が経過しているが、制度創設の背景には「相続登記未了の不動産増加」の問題があるとされている。不動産の登記名義人(所有者)が死亡した場合、相続等によって所有権が移転したことの登記(相続登記)が必要であるが、最近では、この相続登記が未了のまま放置されている不動産が増加し、これがいわゆる「所有者不明土地問題」や「空き家問題」の一因になっているとの指摘がされている。「法定相続情報証明制度」は、このような状況下において相続登記推進に向けた取組みの一つとして新設されたものである。なお、相続登記については、2024年4月1日から申請が義務化となる法改正がすでに行われている(「民法等の一部を改正する法律」:2021年4月21日成立、4月28日公布)。

 生活様式や価値観が多様化し、相続のあり方やめぐる環境も従来から変化する中で、煩雑となることの多い相続に関する手続きの負担を軽減する可能な方法として、「法定相続情報証明制度」の活用を検討することも有効な対策となることが期待できる。
参考:
(セールス手帖社 堀 雅哉)

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