職場におけるメンタルヘルス対策

沖田 眞紀
2022.08.04

職場におけるメンタルヘルス対策が必要な理由
 近年、多くの職場で、労働者のストレス、心の健康問題が深刻化しています。

 心の病気を発症すると、作業効率が低下したり、長期休業となって周囲の負担が増えるなど、職場の雰囲気や活力にも影響を及ぼします。

 労働者の心の健康問題による労災認定も増えており、民事訴訟で多額の損害賠償請求が認められる事案やそれによる企業イメージの低下、併せて企業の責任が追及されることもあります。昨今では、企業だけでなく経営者の責任を追及する訴訟も増加しています。

 職場におけるメンタルヘルス対策は、職場の活性化や業務効率向上のためだけでなく、リスクマネジメントの観点からも、大変重要な意義を持っていることを理解し、取り組んでいく必要があります。
心の健康づくり計画理由
 職場内でメンタルへルス対策を適切に実施するためには、その体制・仕組みをシステム的に構築し、実施内容を具体的な計画に盛り込んで、その計画に沿い行っていく必要があります。厚生労働省の「職場における心の健康づくり~労働者の心の健康の保持増進のための指針~(以下指針)」では、このシステム構築と計画策定を「心の健康づくり計画」として、定めるべき事項として以下のものを挙げています。
事業者がメンタルヘルスケアを積極的に推進する旨の表明に関すること
事業場における心の健康づくりの体制の整備に関すること
事業場における問題点の把握及びメンタルヘルスケアの実施に関すること
メンタルヘルスケアを行うために必要な人材の確保及び事業場外資源の活用に関すること
労働者の健康情報の保護に関すること
心の健康づくり計画の実施状況の評価及び計画の見直しに関すること
その他労働者の心の健康づくりに必要な措置に関すること
事業者が各都道府県の産業保健総合支援センターのメンタルヘルス対策促進員の助言・支援を受けて、心の健康づくり計画を作成し、計画を踏まえメンタルヘルス対策を実施した場合に、費用の助成を受けることができる制度もあります。
メンタルヘルス対策における『4つのケア』
 指針では、メンタルヘルスケアの進め方として、以下の4つのケアの継続的実施を求めています。
①セルフケア…
労働者(管理監督者を含む)自身が、心の健康について正しく理解し、自らのストレスを予防、軽減、対処する
②ラインによるケア…
労働者と日常的に接する管理監督者が、心の健康問題に関して職場環境改善や労働者に対する相談対応を行う
③事業場内産業保健スタッフ等によるケア…
事業場内産業保健スタッフ等が事業場の心の健康づくり対策の提言を行うとともに、その推進を担い、また労働者及び管理監督者を支援する
事業場内産業保健スタッフ等:産業医、保健師等、衛生管理者等、人事労務管理スタッフ等
④事業場外資源によるケア…
事業場外の機関および専門家を活用し、その支援を受ける
事業場外資源:公共機関(保健所、中央労働災害防止協会等)、健康保険組合、専門医療機関、専門相談機関、労働衛生機関等
参考:
沖田 眞紀(おきた・まき)
特定社会保険労務士
社労士事務所コンフィデンス

千葉県出身。大手電機メーカーをはじめ、介護施設、建設関連会社等様々な業種で、人事労務を担当。長年の実務経験を活かし、現在は人事労務相談・助成金手続・就業規則作成などを中心に社会保険業務および各種相談業務を行っている。

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