国家戦略として金融教育が始まる!?

高橋 浩史
2022.09.15

 これまで、主に民間の金融機関が担ってきた金融教育について、国が体制づくりを行い、国家戦略として推進するよう金融庁が提言するとの報道がありました。その目的はどこにあるのでしょうか。
NISAの拡充を柱に
 岸田内閣が掲げる「資産所得倍増プラン」の柱のひとつは、NISA(少額投資非課税制度)の拡充です。2023年度の税制改正では、NISAの非課税枠の拡大や制度の恒久化などの要望が出されると見られています。

 現状3種類あるNISA(一般・つみたて・ジュニア)ですが、このうちジュニアNISAは2023年で終了します。一般NISAは2024年から、年間20万円まで非課税になる積立投資を行うと(1階部分)、さらに年間102万円まで投資できる(2階部分)、2階建ての「新NISA」として生まれ変わる予定です。

 しかしNISA制度を拡充するだけでは、運用商品のみにとどまってしまいます。貯蓄から投資への流れを確実なものにするためはこれだけでは不十分で、金融商品を売る側と買う側のリテラシー向上が欠かせないとしています。
金融リテラシー向上を官民が連携する
 これまで、何度もスローガンとして掲げられながら定着しなかった貯蓄から投資への流れについては、金融教育が民間の金融機関任せだったとの反省もあるようです。

 そこで、金融商品の販売・勧誘のルールを含めてもう一度見直し、金融リテラシー向上を促進する環境づくりを、官民が連携して推進するために議論するとしています。

 2022年度からは学習指導要領が改訂され、高校の授業で金融教育が必修化されました。しかし、実際に投資を実践するのは学校を出て社会人になってからです。そこで、社会人向けの金融リテラシー教育を、官民が連携して体制づくりを行っていこうというのが金融庁の目論見のように思われます。

 欧米から遅れをとる日本の金融教育の突破口として機能するのかどうかは、今後の体制づくりを見る必要があるでしょう。高齢化社会を迎え、100年人生の経済的な裏付けとして、官民の取り組みが実を結ぶのか注目が集まりそうです。
高橋 浩史(たかはし・ひろし)
FPライフレックス 代表
日本ファイナンシャルプランナーズ協会CFP®
1級ファイナンシャル・プランニング技能士

東京都出身。デザイン会社などでグラフィックデザイナーとして20年活動。 その後、出版社で編集者として在職中にファイナンシャル・プランナー資格を取得。2011年独立系FP事務所FPライフレックス開業。 住宅や保険など一生涯で高額な買い物時に、お金で失敗しないための資金計画や保障選びのコンサルタントとして活動中。 その他、金融機関や出版社でのセミナー講師、書籍や雑誌での執筆業務も行う。
ホームページ http://www.fpliflex.com
ブログ http://ameblo.jp/kuntafp/

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