増える、減資による大企業の中小企業化

木下 洋子
2022.09.22

いわゆる大企業も減資で税制上の中小企業扱いに
 2021年以降、コロナ禍において苦境にある旅行業、飲食業を中心に、大企業の減資が増えている。最近では8月26日に、旅行大手の株式会社エイチ・アイ・エスが資本金を約247億円9,883万円から1億円にすることを発表した。株式会社エイチ・アイ・エスは減資を行う目的として、「財務体質の健全化」「資本政策の柔軟性及び機動性の確保」の他「税負担の軽減」を挙げている。

 資本金が1億円以下の企業は、税制上「中小企業」に分類され、様々な税法上の措置の恩恵を受けることができる(大法人との間に支配関係がある一定の法人を除く。以下同じ)。事業規模が大きい、いわゆる大企業とみられる株式会社エイチ・アイ・エスのような会社でも、資本金が1億円となれば、中小企業の税法上の優遇措置を受けることができる。

 以下、中小法人の税法上の優遇措置について、よく適用されるものをご紹介する。
法人税法上の優遇措置
(1)
法人税率の軽減
法人税の税率は原則として23.2%である。ただし、中小法人は、平成24年4月1日から令和5年3月31日までの間に開始する各事業年度分の年800万円以下の所得金額の部分については、税率が15%に軽減されている。
(注)
この特例の適用者からは、前3事業年度の所得金額の平均額が15億円を超える法人は除かれる。
(2)
欠損金の繰越控除
青色申告書を提出した事業年度において欠損金(税務上の赤字)が生じた場合には、その事業年度の後の事業年度以降に繰り越して、後の事業年度の所得から欠損金を控除することで、法人税の負担を軽減できる。

中小法人では、各事業年度開始の日前10年以内に開始した事業年度において生じた欠損の金額を各事業年度の所得の金額の計算上、全額損金の額に算入することができる。一方、資本金1億円超の法人においては、損金の額に算入することができる欠損の金額は課税所得の50%が上限となる。
(3)
欠損金の繰戻還付
一定の条件を満たす中小法人は、青色申告書を提出する事業年度に欠損金が生じた場合、欠損金が生じた事業年度開始の日の前1年以内に開始した事業年度の所得金額に繰り戻し、既に納めた法人税から、欠損金の分だけ還付を受けることができる。

資本金1億円超の法人については、解散等一定の場合を除き、現在この規定の適用は停止されている。
その他の中小法人に対する優遇措置
年間800万円までの交際費が損金の額として認められる
取得価額が30万円未満の減価償却資産であれば即時にその全額を経費として算入できる
中小企業経営強化税制による優遇措置(従業員数1,000人以下の法人)
中小企業向け賃上げ促進税制による優遇措置(同上)
法人事業税における外形標準課税の適用から外れる
 減資により経営の立て直しを図るのは、やむ得ないことではあるが、相次ぐ大企業の税制上の中小企業化は国や地方自治体の大幅な税収減ともなる。今後政府は税制上の見直しを行うのだろうか、注視したい。
参考:
木下 洋子(きのした・ひろこ)
マネーコンシェルジュ税理士法人

群馬県出身。大学卒業後、会計事務所勤務を経て現法人へ。法人成り支援や節税対策・赤字対策など、中小企業経営者の参謀役を目指し、活動中。年に数回の小冊子発行など、事務所全体で執筆活動にも力を入れている。趣味はピアノを弾くこと。

マネーコンシェルジュ税理士法人
◎私たちは「経営者へのお役立ち度★世界一」の税理士事務所を目指します!
http://www.money-c.com/
http://sogyo5.money-c.com/
マネーコンシェルジュ税理士法人がお届けする無料オリジナルマガジン
『あんしん相続通信』
保険営業マンの皆さんへ
お客様への情報提供ツールとして、ご利用ください(コピー配布可)。
右下の申込書の最下段に、ご自身のお名前をご記入の上、お客様にお渡しください
もし、そのお客様から生命保険のご相談があった場合には、必ずご紹介させていただきます。
ご希望の方は、下記申込書にご記入の上、06-6450-6991までFAXください。
https://www.money-c.com/kr/ASTapplication.pdf

▲ PAGE TOP