保険契約者を代理する制度について

森田 和子
2022.10.17

 銀行でも生命保険会社でも、以前に比べて、本人でなければできないことが増えているように感じます。親が高齢のため、代わりに手続きをしようとしてもできなかったという経験をお持ちの方もいるのではないでしょうか。元気であれば一緒に行えばよいのですが、認知症などで意思の確認が難しくなった場合が問題となります。生命保険会社で取り扱いが増えている契約者代理制度(会社によって名称が異なる)について確認していきましょう。
以前からあった指定代理請求人
 契約者代理制度とは、あらかじめ指定された代理人が、契約者に代わって手続きができる制度です。代理人を指定する制度としては、指定代理請求人の制度もあるので、まず、こちらの内容を確認しましょう。

 以前からある指定代理請求人の制度とは、保険金や給付金を受取人が請求できない場合に、受取人に代わって代理人が請求できる制度です。例えば、原則として入院給付金は被保険者である本人が請求しますが、意識不明の重体や、本人に病名を知らせていない場合などは、自分で請求することができません。このような場合に、指定代理請求人であれば、本人に代わって給付金を受け取ることができます。
解約もできる契約者代理制度
 このように、指定代理請求人は、給付金などを代理で請求できますが、契約内容の変更や解約といった契約そのものについての手続きはできません。これらを行うことができるのが契約者代理制度です。

 例えば、将来、もしも介護が必要になった場合には、加入している保険を解約し、その解約返戻金を老人ホームの費用にあてたいと考える方もいます。ところが、その時には、認知症などで本人が解約の手続きをすることが難しくなっている可能性もあります。ここで役立つのが契約者代理制度です。あらかじめ指定された契約者代理人であれば、契約を解約し、解約返戻金を受け取ることができます。契約者代理人に指定できるのは、配偶者、直系血族、兄弟姉妹、同居または生計を一にしている3親等内の親族、死亡保険金受取人、財産管理人など(会社によって異なる)です。

 介護も含めた老後資金を考える時、家族などが解約できる生命保険があることは、本人や周囲の人の安心にもつながります。代理人は慎重に選ぶ必要があり、どなたにもお勧めできるものではありませんが、契約している保険会社で取り扱いがあれば、検討してみるとよいのではないでしょうか。
森田 和子(もりた・かずこ)
FPオフィス・モリタ 代表
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®認定者、DCA(確定拠出年金アドバイザー)

大学卒業後、コンピュータソフト会社、生命保険会社勤務を経て、1999年独立。保険や投資信託の販売をしない独立系のファイナンシャル・プランナー事務所としてコンサルティングを行っている。
お金の管理は「楽に、楽しく」、相談される方を「追い詰めない」のがモットー。情報サイト・新聞・雑誌への執筆多数。企業・学校・イベントで行うマネープランセミナー・講演も好評。

FPオフィス・モリタ http://okane-net.com/

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