就業規則の変更に関する注意事項

庄司 英尚
2022.11.07

最近、就業規則を変更した企業は多い
 就業規則その他諸規程について内容を変更して労働基準監督署に届出をすることは多いかと思うが、この10月には育児介護休業法の大きな改正があったので、多くの事業所で育児介護休業規程の変更の届出をしたと思われる。今回は就業規則の変更に関係する適切な手続き業務についてポイントをまとめておくこととする。
意見を聴くことが法律上で規定されている
 就業規則本則だけでなく別に定めたパートタイマー就業規則、賃金規程、育児介護休業規程等も就業規則の一部であって、諸規程の一部を少し変更しただけでも届出をしなければならないことになっている。届出義務があるのは、従業員数10名以上の事業所になる。「10名以上」とは、正社員に限らずパートタイマーなども含めた人数で、事業所(本社、支店、工場等)ごとに判断され、また事業所単位で就業規則を届け出る必要がある。

 就業規則を変更した際には、パートタイマー等非正規従業員を含む全従業員の過半数の代表者(以下、「過半数代表者」という)の意見を聴き、所轄の労働基準監督署へ届け出なければならない。この「意見を聴く」というのは、あくまで過半数代表者の意見を聴取すればいいのであり、全員の同意が必要というわけではない。

 意見書には、例えば改正内容等について「〇条の改定には反対です」などの異議があるという意見が書いてあったとしてもその届出に問題はない。就業規則の変更の手続きにおいて、意見を聴くというプロセスが法令で定められているので、事実のとおりを記載した意見書(書式は決まりなし)を添付して就業規則変更届を提出すことが大切である。もし意見がない場合でも「意見なし」、「今回の改定内容について全面的に支持します」などと必ず記載をしてもらわなければならない。
過半数代表者の選出方法は適切に
 もちろん改定内容が法令違反であるような内容であったり、または明らかな不利益変更や合理的な理由がない変更であったりするような場合は、従業員の同意を得なければその変更が後から無効になることもある。そのため就業規則の変更に関しては、その不利益の程度、労働条件を変更する必要性によっては従業員向け説明会を開催すべきである。

 また意見書には、過半数代表者の氏名に加えて、職名や選出方法の記載も忘れてはならない。職名は、役職がない場合、職種を記載するかあるいは「一般社員」と記載することが多い。人事部長や営業部長が過半数代表者として記載されている場合は、労働者代表の適格性が確認できないとみなされて、労働基準監督署が届出を受理してくれないこともあり得るので適切な方法で選出することが必要だ。

 最後に選出方法についてだが、変更の際に会社から意見を聴取される者を選出することを明らかにしたうえで、実施する投票、挙手等の方法によって選出することと規定されているので、その点もふまえてスムーズに就業規則の変更の届出をできるようにしたい。
参照:
庄司 英尚(しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、アイウェーブ社労士事務所 代表
社会保険労務士 人事コンサルタント

福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所(現・アイウェーブ社労士事務所)を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続き及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。

公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/

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