会計検査院、税金の徴収漏れ約1億6千万円を指摘

浅野 宗玄
2022.11.21

46税務署において徴収不足が72事項
 会計検査院が公表した令和3年度決算検査報告によると、各省庁や政府関係機関などの税金のムダ遣いや不正支出、経理処理の不適切などを指摘したのは310件、約455億2,351万円(297件分)だった。前年度に比べ、指摘件数は100件増加。前年度に引き続き、新型コロナ感染防止への対応として、検査官による実地検査が検査対象機関に配慮する中で、指摘件数は増加したが、指摘金額では前年度の約2,109億円を大幅に下回った。

 財務省に対しては、法令違反に当たる不当事項として、税金の徴収額の過不足1億6,216万円(うち過大154万円)が指摘された。検査の結果、46税務署において、納税者69人から税金を徴収するに当たり、徴収不足が72事項、1億6,062万円、徴収過大が2事項、154万円。前年度は、42署において徴収不足が52事項、1億5,492万円だったので、徴収不足はほぼ横ばいだったことになる。昨年度、徴収過大はなかった。

 徴収が過不足だった74事項を税目別にみると、「法人税」が28事項(うち過大1事項)で徴収不足が8,129万円(同▲96万円)と最も多く、以下、「申告所得税」22事項、同4,922万円、「消費税」13事項、同2,240万円、「相続・贈与税」7事項(同1事項)、同459万円(同▲58万円)、「源泉所得税」2事項、同171万円などだった。これらの徴収過不足額については、会計検査院の指摘後、全て徴収決定・支払決定の処置がとられている。
「法人税額の特別控除」での徴収不足の事例
 法人税では、徴収過不足28事項のうち、「法人税額の特別控除」に関するものが11事項、「交際費等の損金不算入」に関するものが6事項を占めた。

 例えば、「法人税額の特別控除」での徴収不足の事例で、A社は、2019年8月から20年7月までの事業年度分の申告で、当該事業年度の雇用者給与等支給額15億8,352万円が、前事業年度の比較雇用者給与等支給額14億7,236万円を上回るなどとして、雇用者給与等支給増加額1億1,115万円の15%相当額1,667万円を法人税額から控除していた。

 しかし、A社の前事業年度分の申告書に添付された明細書等によれば、雇用者給与等支給額から控除すべき適正な比較雇用者給与等支給額は14億8,745万円だった。そのため、適正な雇用者給与等支給増加額は9,606万円と算出され、法人税額の特別控除額はその15%相当額の1,440万円となり、226万円過大となっているのに、税務署はこれを見過ごしたため、法人税額が徴収不足になっていた。
参考:
浅野 宗玄(あさの・むねはる)
株式会社タックス・コム代表取締役
税金ジャーナリスト

1948年生まれ。税務・経営関連専門誌の編集を経て、2000年に株式会社タックス・コムを設立。同社代表、ジャーナリストとしても週刊誌等に執筆。著書に『住基ネットとプライバシー問題』(中央経済社)など。
http://www.taxcom.co.jp/
○タックス・コム企画・編集の新刊書籍『生命保険法人契約を考える』
http://www.taxcom.co.jp/seimeihoujin/index.php

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