金融庁の2022年保険モニタリングレポート

加藤 悠
2022.11.24

 去る2022年9月30日に、金融庁から「2022年保険モニタリングレポート」が公表されました。
 これは、保険会社における課題に対し、金融庁として、
2021事務年度(2021年7月~2022年6月)には、何を行ったのか
2022事務年度(2022年7月~2023年6月)には、どのような点に着目して取り組むか
をまとめた文書で、2021年事務年度から策定・公表されています。
 このレポート内の生命保険の募集人の皆様に関係する事項について取り上げてみます。
営業職員管理態勢の高度化
 営業職員チャネルがある生命保険会社で、金銭詐取問題をはじめとする不適切な事案が継続的に発生していたため、2021事務年度において、金融庁は業界団体である生命保険協会との意見交換会等を通じ、「複数回にわたって注意喚起を実施」し、「各社の会社全体の企業風土・リスク文化の醸成や強固な営業職員管理態勢の構築を促し」ています。

 2022事務年度の方針として、「生命保険協会が検討している“新たな方策”が、営業職員による不適切事案の未然防止や再発防止を図った上で、真に顧客本位の業務運営に資する有益なものとなるよう、検討を促していく」としています。この“新たな方策”、一部報道では「ガイドラインの制定」とされていますが、一方で「各社によって体制や企業風土は異なり、ガイドラインを制定し画一的な対応を促すにも限界があるのでは」との見方もあるため、どのようになるかは要注目です。
公的保険を踏まえた保険募集
 「過不足のない保険商品を選択し、必要な保障を確保するためには、公的保険の内容を理解した上で、民間保険に加入することが重要である」との観点から、金融庁は昨年の12月に「保険会社向けの総合的な監督指針」を改正し、募集人に対する公的保険制度に関する教育やお客さまへの適切な情報提供を通じた意向把握・確認等の監督上の着眼点を明確にしました。そのうえで、監督指針改正後に、生命保険会社および代理店に対し、公的保険制度の教育やそれを踏まえた提案の実態についてモニタリングを行った旨が記されています。

 詳細については割愛しますが、たとえば「高額療養費制度」について、「所得ごとの支払上限額や制度でカバーされない範囲をパンフレットで説明するなどの工夫を行っている会社がある一方、制度の存在に言及するのみで、具体的な説明がないケースも確認された」との記述があり、十分な説明が行われているか、について金融庁が強い関心を示していることがうかがえます。

 なお、2022事務年度では、このモニタリング結果を踏まえた各保険会社等へのアンケートや対話の実施と、消費者のリテラシー向上のための施策を行う、としています。
 このほかにも
節税保険への対応
外貨建保険の募集管理等の高度化
保障内容の見直しに関する顧客視点に立った商品設計
保険代理店管理態勢の高度化
などがテーマとしてあげられています。また、巻末にはコラムとして、「新型コロナウイルス感染症による“みなし入院”に係る入院給付金等について」などトピック的な内容も掲載されています。募集時のコンプライアンスに関する記述が多いので、関係のありそうな箇所についてはご覧いただくことをおすすめします。
参照:
(セールス手帖社 加藤 悠)

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