来夏にも負担増決定!?今さら聞けない介護保険料のこと

田中 元
2023.01.12

2025年に向けた介護保険見直しの論点
 自分や家族に介護が必要になったとき、介護保険による介護サービスは(所得により)1~3割負担で利用できる。逆に言えば7~9割が保険からの給付となるが、それを支えているのが国民の支払う介護保険料だ。高齢者人口が増え、介護サービス需要が高まれば、当然ながら保険料負担も増えることになる。

 周知のとおり、いわゆる団塊世代が全員65歳以上を迎えるのが2025年。介護サービス需要もさらに高まることは間違いない。その前年となる2024年には、再び介護保険制度が見直される予定だが、先に述べた保険料負担のあり方も避けては通れない課題だ。
現役世代の保険料の伸びが大きくなる中で
 ここで、そもそもの介護保険料について整理しておこう。介護保険料を負担するのは40歳以上の国民で、65歳以上から市町村ごとに徴収するのが「1号保険料」、40~64歳からそれぞれが加入する医療保険者(国民健康保険や健康保険組合など)が医療保険料と一緒に徴収するのが「2号保険料」となる。

 いずれも、サービス利用の増加とともに1人あたり保険料は年々アップしきた。介護保険スタート時の2000年度と2022年度を比べると、1号保険料(基準額の全国平均)で月額2,911円⇒6,014円と2倍超、2号保険料(事業者負担と公費負担含む)で月額2,075円⇒6,829円と約3.3倍まで伸びている。

 2号保険料を負担するのは、いわば現役世代。その保険料の伸びが、高齢者の支払う1号保険料の伸びを上回ったことになる。しかも2号保険料は事業者負担も発生しているので、現役世代の家計状況に加え、企業の経営面の課題としても注目されやすい。

 そして現在、政府が施策の主要テーマとしているのが全世代型社会保障だ。内閣府が2022年末にまとめた報告書では、「子育て・若年世代への支援を急速かつ強力に再整備すること」をかかげ、「負担能力に応じて、すべての世代で、公平に支えあうしくみ」を強化するとしている。つまり、65歳以上が負担する1号保険料のあり方も「負担能力」に応じた再編が目指されると考えていいだろう。
65歳以上保険料が月2万円の可能性も?
 問題は、高齢者の所得格差も広がる中、応能負担に向けた調整をどう図るかにある。1号保険料について、国は所得水準に応じた9段階の標準設定を行なっている。中央の第5段階で保険料基準額が適用され、第1から第9で0.5~1.7が基準額に乗ぜられる。2022年度の平均基準額が6,014円なので、最高所得の第9段で月額10,223円となる計算だ。

 ただし、この9段階というのはあくまで「標準」で、市町村による弾力化が可能。現実は、国が定める9段階を採用している市町村は5割に満たない。一方、10~12段階の採用が34%、13段階以上も18%超となっている。さらに所得最上位の乗率も、国基準の1.7以下はやはり5割に満たず、2.5以上という市町村も9%近くに。各市町村レベルでは、すでに住民の所得実態に合わせた精緻な段階設定や「所得のある人にもっと負担してもらう」という流れができつつあると言える。

 こうした実態を受け、厚労省の社会保障審議会(介護保険部会)では、標準所得段階のさらなる多段階化や上位所得者の乗率引き上げも論点となり、2023年の早いうちに結論を出すとしている。ちなみに、現在の標準段階で最上位は年間所得320万円以上。そのあたりの高額所得者には、月々の介護保険料が1.5万円や2万円近くになる時代が目前に迫っている。家計面で頭に入れたい未来の1つだ。
田中 元(たなか・はじめ)
 介護福祉ジャーナリスト。群馬県出身。立教大学法学部卒業後、出版社勤務を経てフリーに。高齢者介護分野を中心に、社会保障制度のあり方を現場視点で検証するというスタンスで取材、執筆活動を展開している。
 主な著書に、『2018年度 改正介護保険のポイントがひと目でわかる本』『《全図解》ケアマネ&介護リーダーのための「多職種連携」がうまくいくルールとマナー』(ぱる出版)など多数。
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