物流業界 2024年問題

沖田 眞紀
2023.01.23

 働き方改革関連法の施行により、大企業では2019年4月より、中小企業では2020年4月より、時間外労働時間の上限は原則として月45時間、年360時間に制限されました。また、労使間で合意した場合でも、時間外労働時間に関して下記の制限が罰則付きで設けられ、違反した場合は、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があります。
法改正のポイント
年720時間以内
月100時間未満(休日労働を含む)
2~6ヶ月平均で80時間以内(休日労働を含む)
月45時間を超える月は6ヶ月まで
 しかし、下記の業務に関しては上記の規制が5年間猶予され、2024年4月から適用されることとなっており、規制の取扱いが異なる業務もあります。
規制が5年間猶予される業種
建設事業
自動車運転の業務
医師
鹿児島県及び沖縄県における砂糖製造業
物流(自動車運転の業務)の上限規制(2024年4月以降)
 トラックドライバー等自動車運転の業務は、2024年4月以降、年間時間外労働時間の上限が960時間(特別条項付き36協定を締結する場合)に制限されます。また、「月100時間未満」、「2〜6ヶ月平均80時間以内」、「月45時間を超える月は6ヶ月まで」という規制は適用されません。

 つまり、年間時間外労働時間が960時間を超えなければ、1ヶ月あたり100時間、2〜6ヶ月平均で80時間を超えても違反ではありません。
2024年問題
 ドライバー等の稼働時間が制限されることにより、会社の対応業務量が落ち、会社の売り上げ・利益が減少、収益がマイナスとなることが心配されます。また、2023年4月から中小企業も月60時間超の時間外労働への割増賃金率が50%となります。ドライバーに対しても同様に適用されることから、労働時間が減少して収入減となり、ドライバーの離職率が高くなることが懸念されます。さらに、新たな人材確保も厳しくなり、人手不足がさらに深刻化することが考えられますので、会社が荷主に請求する運賃を値上げした場合、荷主の負担する物流コストが上がります。

 しかし、ドライバーは労働時間が他業種と比べて長く、賃金は低いという現況は改善する必要があります。長時間労働は疲労が蓄積し、健康に大きな影響を与えます。時間外労働の上限規制に対応するためには、労働時間を適切に把握することが重要であり、また、ドライバー不足を解消するためには、全産業平均の労働時間、賃金にすることが求められます。
参考:
沖田 眞紀(おきた・まき)
特定社会保険労務士
社労士事務所コンフィデンス

千葉県出身。大手電機メーカーをはじめ、介護施設、建設関連会社等様々な業種で、人事労務を担当。長年の実務経験を活かし、現在は人事労務相談・助成金手続・就業規則作成などを中心に社会保険業務および各種相談業務を行っている。

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