高齢者の消費トラブル、最新の注意ケース

田中 元
2023.03.16

国民生活センター啓発のトラブル10選
 高齢になると判断能力が衰えたり、家族と離れて身近で相談できる相手がいない状況も増える。そういうことから高齢者は悪質商法や詐欺などさまざまな消費者トラブルに巻き込まれやすい。また、悪質商法などのパターンは年々変化し、気を付けていても巻き込まれがちだ。

 こうした次々と更新されるトラブル事例については、独立行政法人・国民生活センターが最新の注意喚起を随時行っている。2022年9月には、「高齢者とそのまわりの方に気を付けてほしい消費者トラブル・最新10選」を広報。2023年1月には、先の広報をもとにひと目でわかるリーフレット「見守り新鮮情報」も発行している。
 その「消費者トラブル・最新10選」は、以下のとおり。
①屋根や外壁、水回りなどの「住宅修理」
②保険金で住宅修理できると勧誘する「保険金の申請サポート」
③「インターネットや電話、電力・ガスの契約切替」
④「スマホ」のトラブル
⑤健康食品や化粧品、医薬品などの「定期購入」
⑥パソコンの「サポート詐欺」
⑦「架空請求」、「偽メール・偽SNS」
⑧在宅時の突然の「訪問勧誘、電話勧誘」
⑨「不安をあおる、同情や好意につけこむ勧誘」
⑩便利でも注意「インターネット通販」
不安につけこむ保険金申請サポート等
 ⑥、⑦などは明らかな犯罪なので、警察等を通じて地域の防犯活動などによる啓発は比較的進んでいる。問題は、それ以外の一見正当な消費契約のケースだ。特に、②~④に対する警戒は、高齢者に十分周知されているとは言い難い面もある。この3つについて、国民生活センターが示している事例とトラブルを防ぐポイントをあげてみよう。

 ②は、センターの広報で「火災保険を使って自己負担なく住宅の修理をしないかと勧誘され、高額な申請サポート契約をした」という事例が紹介されている。近年多発する台風・水害後に生じるケースが多い。火災保険では「経年劣化」による建物損傷は補償されないが、自然災害後の不安心理に付け込んだものと言える。こうした「申請サポート」を受ける前に、必ず契約している損害保険会社に連絡することが被害を防ぐ基本中の基本だ。

 ③の事例で多いのが、「現在契約している事業者のプラン変更だと思って了承したら、別の事業者との契約になっていた」というもの。その点では、勧誘してきた事業者の名称やプラン内容をよく確認することが前提となる。

 また、電力・ガスの契約切替勧誘については、相手の求めに応じて安易に検針票などを見せてしまうと、相手が検針票記載の情報をもとに勝手に契約切替手続きを進めてしまう危険もある。検針票は安易に見せないことが重要だ。
高齢者のスマホ利用をめぐるトラブルも
 ④については、スマホを使う高齢者も増える中、「思いがけない高額な料金を請求された」といった相談が多い。事業者には「消費者が最低限理解すべき提供条件の概要説明」が義務づけられているが、高齢者の場合、さまざまなセールストークに翻弄されがちだ。結果、不要な高額サービス・プランの契約をさせられるといったケースも後を絶たない。

 いずれにしても、今回紹介したような消費者トラブルに巻き込まれた場合は、最寄りの消費生活センターか、消費者ホットライン=局番なしの電話番号「188(いやや)」に相談したい。また、高齢者と身近に接する人は、冒頭のリーフレットなどを渡して普段から啓発しておきたい。
参照:
田中 元(たなか・はじめ)
 介護福祉ジャーナリスト。群馬県出身。立教大学法学部卒業後、出版社勤務を経てフリーに。高齢者介護分野を中心に、社会保障制度のあり方を現場視点で検証するというスタンスで取材、執筆活動を展開している。
 主な著書に、『2018年度 改正介護保険のポイントがひと目でわかる本』『《全図解》ケアマネ&介護リーダーのための「多職種連携」がうまくいくルールとマナー』(ぱる出版)など多数。
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